海外旅行先でドライブしたい。国際免許は取得したが、どの国が運転しやすいでしょうか。日本と同じ左側通行の国であれば、感覚的にも同じように運転できると思います。このページでは、左側通行の国、右側通行の国について、ご紹介します。海外旅行先でレンタカーの旅をする上で、事前に確認しておくことの1つとなります。
はじめに:左右ハンドルの世界へようこそ
海外各国の状況は、下図のとおりで、赤で示した左ハンドル(右側通行)が圧倒的に多い状況です。ちなみに、青の国が右ハンドル(左側通行)です。

日本は左側通行ですが、世界の分布を見ると、76の国(地域)が左側通行で、163の国(地域)が右側通行になっています。
導入:なぜ左右のハンドルが存在するのか
自動車のハンドル位置が左右に分かれる現象は、単なる設計上の選択ではなく、各国が採用する「車両通行帯」という交通ルールに深く根ざしています。
この基本的な違いは、車両の設計思想、ドライバーの操作性、走行時の安全性、さらには日常生活における利便性にまで広範な影響を及ぼします。本記事では、左ハンドル車と右ハンドル車の構造的・機能的な差異を詳細に比較し、それぞれの特性が運転体験や実用性にどのように影響するかを包括的に解説します。
ハンドル位置の概況
世界的に見ると、車両の右側通行を採用している国が多数を占めています。人口比では左側通行が約34%であるのに対し、右側通行は約66%に達します。また、道路の総延長距離で見ても、左側通行は約27.5%、右側通行は約72.5%と、右側通行が圧倒的な割合を占めています 。日本は、イギリスやタイなどと同様に、左側通行を採用している少数の国の一つであり 、この点が日本の自動車事情に大きな影響を与えています。
世界的に右側通行が多数派であるという事実は、自動車メーカーの基本的な設計思想に大きな影響を与えています。多くの自動車メーカーは、最も効率的に大量生産を行うため、左ハンドル車を「グローバルスタンダード」としての基本設計としています。
このため、日本やイギリス、オーストラリアといった左側通行の国々向けには、その基本設計からの特別な適応や設計変更が必要となります。このグローバルな標準化の動きと、各国のローカルな規制や歴史的経緯との間の摩擦は、特に輸入車市場において顕著な影響を与える根本的な要因となっています。
多数派の交通ルールが車両設計の「基本形」を形成し、少数派の国々ではその基本形からの「適応」や「特化」が求められるという構造が存在します。この適応の必要性が、後述する操作系の違い、ヘッドライトの光軸問題、さらにはインフラとの不整合(料金所や駐車場での不便さ)といった具体的な課題の根源となっています。
交通ルール
交通ルールは、単なる地理的な選択にとどまらず、歴史的経緯や地政学的な要因によって形成されてきた複雑な背景を持っています。例えば、中国返還後の香港やマカオ、アメリカ領ヴァージン諸島は、本国が右側通行であるにもかかわらず左側通行を採用しています。逆に、イギリス領のジブラルタルは右側通行です。かつての日本の沖縄県も、一時的に右側通行の時期がありました 。
このような交通ルールの多様性は、その国の歴史や国際的な繋がりを反映しており、自動車メーカーは単一の設計で全世界の市場をカバーすることができません。特定の市場向けにカスタマイズされた車両(例:日本向け右ハンドル輸入車)を生産する必要が生じ、これはサプライチェーンの複雑化や製造コストの増加にも繋がり、結果として消費者が利用できる車種の選択肢や価格にも影響を与えます。
以下の表は、世界の主要国の交通ルールと標準的なハンドル位置を示しています。
表1:世界の主要国の交通ルールと標準ハンドル位置
国名 | 通行側 | 標準ハンドル位置 |
日本 | 左側通行 | 右ハンドル |
イギリス | 左側通行 | 右ハンドル |
オーストラリア | 左側通行 | 右ハンドル |
アメリカ | 右側通行 | 左ハンドル |
ドイツ | 右側通行 | 左ハンドル |
フランス | 右側通行 | 左ハンドル |
中国 | 右側通行 | 左ハンドル |
タイ | 左側通行 | 右ハンドル |
左側通行の国
日本と同じ左側通行の国は以下の通りです。左側通行の国のほうが、同じ右ハンドルなので、運転がしやすいと思います。初めて海外でドライブする場合は、左側通行の国から始めることがお勧めです。
・東アジア:香港、マカオ
・東南アジア:インドネシア、シンガポール、タイ、ブルネイ、マレーシア、東ティモール
・南アジア:インド、スリランカ、ネパール、バングラデシュ、パキスタン、ブータン、モルディブ
・オセアニア:オーストラリア、キリバス、クック諸島、ソロモン諸島、ツバル、ナウル、ニウエ、
ニュージーランド、パプアニューギニア、フィジー、米領サモア
・ヨーロッパ:イギリス、アイルランド、マルタ
・中東:キプロス
・アフリカ:ウガンダ、ケニア、ザンビア、ジンバブエ、スワジランド、セイシェル、タンザニア、ナミビア、
ボツワナ、マラウイ、モザンビーク、レソト、南アフリカ
・南米:ガイアナ、スリナム
日本は左側通行ですが、その他の左側通行の国を確認すると、ほとんどがイギリスの植民地だった国で、イギリスの基準で道路や交通ルールが整備されたのだとする説があります。
日本はイギリスの植民地ではありませんでしたが、日英同盟によってイギリスとの関係値が深いため、イギリスの影響を受けた可能性は考えられます。
一方で、右側通行になっている国については、「ナポレオンの影響(ナポレオンが征服した国が右側通行にされた)」とする説がありますが、こちらは実際にナポレオンがフランス革命時に左側通行から右側通行にしており、イギリスや日本などの左側通行の国はナポレオンに支配されていないため、説得力があります。
基本定義と運転席の位置
基本定義と運転席の位置をみていきましょう。
左ハンドル車とは
「左ハンドル車」とは、運転席が車両の進行方向に対して左側に配置されている自動車を指します 。このタイプの車両は、アメリカ、ドイツ、フランスなど、主に右側通行を採用している国々で標準的に設計・製造されています 。日本国内においては、輸入車や海外からの逆輸入車、あるいは海外から持ち込まれた車両として存在し、その存在は日本の左側通行の道路環境において特異な位置づけとなります 。
右ハンドル車とは
一方、「右ハンドル車」は、運転席が車両の進行方向に対して右側に配置されている自動車を指します。このタイプの車両は、日本、イギリス、オーストラリアなど、左側通行を採用している国々で標準的に採用されています 。右ハンドル車は、日本の道路環境に最適化された設計がなされており、国内での運転において最も自然で運転しやすい選択肢とされています 。
交通ルールとの関係性
ハンドル位置は、その国の交通ルール、すなわち車両の通行帯に厳密に基づいて設計されています。これは、それぞれの通行帯での運転に最高の安全性と効率性をもたらすように最適化されているためです 。
基本的な原則として、運転席は道路の中央寄りに配置されることで、対向車の視認性が向上するように設計されています 。この設計思想は、交通安全の確保を最優先しており、車両が単体で存在するのではなく、道路環境という複雑なシステムの一部として機能することを前提としています。
ハンドル位置が単なる配置の問題ではなく、その国の交通ルール(通行帯)に「最適化」されているという事実は、自動車の設計思想の根本原理が交通安全と効率性にあることを示しています。
運転席が道路の中央寄りに配置されることで視認性が向上するという原則は、この最適化の具体的な目的、すなわち安全性の確保を裏付けています。
この根本的な設計思想の理解は、後述する各論(操作性、安全性、利便性)の差異を深く理解するための基盤となります。交通ルールが車両の最も基本的な設計(運転席の位置)を決定し、それがさらに視界の確保や操作系の配置、さらにはヘッドライトの光軸といった安全に関わる要素に直接的な影響を与えるという明確な因果関係が存在します。
車内レイアウトと操作系の違い
車内レイアウトと操作系の違いについて、解説します。左ハンドル車と右ハンドル車の違いのイメージを図から掴んでください。

ステアリングホイールとペダル配置の比較
ステアリングホイールは運転席の正面に位置するため、左右ハンドル車ではその位置が反転します。ペダル配置に関しては、右からアクセル、ブレーキ、クラッチの順に並ぶのが一般的であり、この基本的な配置は左右ハンドル車で共通しています 。
しかし、特にマニュアルトランスミッション(MT)車の場合、ペダル配置において左ハンドル車の方が人間工学的に優れている可能性があるという見解があります 。右ハンドル車では、右前タイヤのタイヤハウスを避けるためにペダル全体が左寄りに配置されがちで、その結果、運転者の体がわずかに左向きに偏る傾向があります。これに対し、左ハンドル車では、一番左にフットレストがあり、左前輪のタイヤハウスや左側のボディ形状の影響を受けにくいため、クラッチ、ブレーキ、アクセルペダルをより理想的な位置に配置でき、足元の空間を最大限に活用できるとされています 。
シフトレバーの操作性と配置
シフトレバーは通常、車内の中央に位置し、クラッチペダルは左足で操作する点は、左右ハンドル車で共通しています 。
MT車におけるシフト操作性には、左右ハンドルで明確な違いが見られます。左ハンドル車の場合、シフト操作を右手で行い、クラッチ操作を左足で行うため、上半身と下半身で逆方向に踏ん張る形となり、自然に体勢が安定すると言われています 。この「対角線の動き」は、人間の身体構造に理にかなっており、特にスポーツ走行時など、より繊細な操作が求められる場面でその優位性が指摘されることがあります 。
さらに、シフトチェンジの具体的な動作においても、左ハンドル車(右手操作)の方が人間工学的に自然で操作性が高いという意見が強くあります。例えば、3速から2速へのシフトダウンでは、シフトレバーを左手で「払い退ける」よりも、右手で「引き寄せる」方がしっくりと操作できるとされています。
同様に、4速から5速へのシフトアップでは、左手で「引き上げる」よりも、右手で「押し上げる」方が楽であると説明されています 。
これは、「払い退けたり引き上げる」動作よりも、「引き寄せたり押し上げる」動作の方が、より自然な筋肉の動きであるため、右手でシフトレバーを操作する左ハンドル車の方が操作性が高いという結論に繋がります 。これらの要素は、左ハンドルMT車が「理想的な運転環境を実現できる」とされ、「車好き」の間で強く支持される本質的な理由の一つとなっています 。
ウィンカー・ワイパーレバーの配置
日本車と輸入車(特に左ハンドル車)では、ウィンカーレバーとワイパーレバーの位置が逆になることがよくあります 。
この違いは、国際規格(ISO)と日本規格(JIS)の差異に起因しています。ISO(国際標準化機構)では、自動車の操作系はハンドル位置に関係なく、ハンドルに対して右がワイパー、左がウィンカーと定められています 。しかし、日本のJIS規格ではウィンカーが右側に配置されるのが一般的であり、この規格の違いがレバー位置の差異として表れています 。興味深いことに、海外で販売される日本車はISO規格に合わせて左手側ウィンカーになっていることが多く、これは自動車メーカーが市場ごとに設計を適応させていることを示しています 。この日本独自の配置には歴史的な背景があるとされており、単なる技術的な選択ではなく、文化や慣習が深く関わっていることを示唆しています 。
ウィンカー・ワイパーレバーの位置に関するISOとJISの規格の違いは、自動車産業におけるグローバルな標準化の動きと、各国の歴史的経緯やローカルな慣習との間の摩擦を具体的に示しています。日本車が海外向けにはISOに準拠しているという事実は、自動車メーカーが市場ごとに設計を適応させる必要性に直面していることを物語っています。
これは、単なる操作性の違いを超え、製造コストの増加や部品の共通化の妨げにもなるという、より広範な課題を示唆しています。規格の不統一は、ドライバーが異なる国の車両を運転する際の「慣れ」の問題だけでなく、製造コストの増加や部品の共通化の妨げにもなるという連鎖的な影響を及ぼします。
これは、自動車の国際的な流通や消費者体験に影響を与えるサプライチェーンと設計の複雑性を示唆しており、グローバル化が進む現代においても、ローカルな特性が依然として重要な意味を持つことを示しています。
その他の操作部・計器類の配置
ダッシュボード上の計器類やその他のスイッチ類(エアコン操作部、オーディオ、ナビゲーションシステムなど)も、運転席の左右に合わせて配置が反転しているのが一般的です。これにより、ドライバーは常に主要な情報や操作部にアクセスしやすいように設計されています。
安全性と視界の確保
安全性と視界の確保も重要なポイントです。
各通行帯における運転時の視界の違い
運転席の位置は、ドライバーの視界と直結し、運転の安全性に大きく影響します。右ハンドル車は、日本の左側通行において、運転席が道路の中央寄りに位置するため、視界が自然と道路全体を捉えやすく、特に右側通行の対向車や右折時の状況を把握しやすいため、運転時の安心感が高いとされています 。
一方、左ハンドル車は右側通行用に設計されているため、日本の左側通行の環境では、右折や追い越し時に前方の視界が妨げられることがあります 。特に、対向車線側の視界が確保しにくくなるため、より慎重な運転が求められ、日本の道路環境に慣れるまでに時間がかかる場合があります 。
ヘッドライトの光軸とカットオフライン
ヘッドライトは、夜間の視界確保と対向車への配慮という二つの重要な役割を担っています。ヘッドライトには「カットオフライン」という機能があり、これは対向車や歩行者に眩しい光が当たらないように、光の照射範囲を適切に制御するものです 。
通行帯に合わせた設計の重要性 日本の右ハンドル車は、左側通行に最適化されており、対向車が眩しくないように、ヘッドライトの光軸がわずかに左側(路肩側)を明るくするように設計されています 。これは、正規輸入車(ディーラー車)もこの仕様に準拠しています。
対照的に、左ハンドル車、特に並行輸入車は、右側通行用に設計されているため、ヘッドライトの光軸がわずかに右側(対向車線側)を明るくするように設計されています 。
並行輸入車における光軸の問題と車検対応 右側通行用の光軸を持つ左ハンドル車が日本(左側通行)で使用されると、対向車を眩惑させてしまうという重大な安全上の問題が生じます 。この問題は、2018年7月に日本の車検ルールが変更されたことで顕著になりました。それまでは「ハイビームで光軸をとる」という規制だったため、並行輸入車でもルール上は車検をパスできる場合がありましたが(安全上は好ましくない状況でした)、2018年7月以降は「ロービームで光軸をとる」というルールに変更されました 。この変更の背景には、HIDやLEDヘッドライトの普及によりロービームでも非常に明るい光を発するようになったことがあり、対向車への眩惑がより大きな問題となったためです 。
このルール変更により、多くの並行輸入車がヘッドライトの光軸の違いにより車検に不適合となるようになりました。対策としては、日本仕様のヘッドライトに交換するのが一般的ですが、高年式のLEDヘッドライトの場合、片側10万円~15万円と高額な費用がかかることがあります 。
また、右車線用のレンズを左用に改造することはできないため、交換が必須となります 。
視界の確保とヘッドライトの光軸は、単なる利便性の問題ではなく、運転の安全性に直結する最も重要な要素です。特に、左ハンドル車が日本の道路で右折・追い越し時に視界が妨げられること、そして右側通行用のヘッドライトが対向車を眩惑させることは、交通事故のリスクを直接的に高める可能性を秘めています。
これは、車両がその国の交通システムに「適合」していることの重要性を強く物語っており、適合しない車両の運用には潜在的な危険が伴うことを示唆しています。車両の設計(ハンドル位置、ヘッドライト)とその国の交通ルール(通行帯)との間のミスマッチは、ドライバーの認知負荷の増加、反応時間の遅延、そして他者への危険という具体的な安全上のリスクを生み出すという連鎖的な影響を及ぼします。
これは、輸入車を検討する際に「特別感」だけでなく、「安全性への配慮」とそれに伴う適合コストが不可欠であることを強調する重要なポイントです。
また、2018年の車検ルール変更は、HIDやLEDヘッドライトの普及という技術的進歩が、既存の規制(ハイビームでの光軸検査)との間に安全上のギャップを生み出し、結果として規制が「ロービームでの検査」へと適応したことを示しています。
これは、技術の進化が法規制の変更を促し、それがさらにユーザー(特に並行輸入車のオーナー)に新たな費用負担や対応を求めるという、技術・規制・市場の複雑な相互作用を具体的に示す事例です。この事例は、自動車技術の進歩が常に安全性の向上に直結するわけではなく、時には既存のインフラや規制との間に新たな課題を生み出すことを示しています。また、規制の変更が、特定の市場(並行輸入車市場)に直接的な経済的影響を与えるという明確な連鎖も見て取れます。
日本の道路環境における実用性と利便性
日本の環境を踏まえて、実用性と利便性の観点で確認していきます。
駐車場・料金所での使い勝手
日本の駐車場や料金所は、右ハンドル車を前提に設計されています 。この設計思想は、左ハンドル車を運転する際に顕著な不便さを生じさせます。左ハンドル車では運転席が外側になるため、駐車券の受け取りや料金支払い、あるいはドライブスルーの利用などがやや不便に感じられることがあります 。多くの場合、ドライバーは助手席側の窓を開けて対応するか、同乗者の助けを借りる必要が生じます。
駐車場や料金所が右ハンドル車前提で設計されているという事実は、車両設計が単独で存在するのではなく、その国の交通インフラと密接に相互依存していることを強く示唆しています。
左ハンドル車が不便を感じるのは、車両自体が「悪い」のではなく、日本のインフラに「適合していない」ためであるという本質的な問題を浮き彫りにします。インフラの設計思想が、特定の車両タイプ(この場合は右ハンドル車)の利便性を最大化し、それ以外のタイプ(左ハンドル車)には不便を強いるという連鎖的な影響が存在します。
これは、車両選択が単なる個人の好みに留まらず、日常生活の効率性やストレスレベルに直接影響を与えるという、より広範な影響を示唆しています。
狭い道や緊急時の対応
日本の細い道路や狭い駐車場では、左ハンドル車は運転席からの距離感が異なるため、操作に苦労することがあります 。特に、車両の左側(路肩側)の感覚を掴みにくく、接触のリスクが高まる可能性があります。
また、日本の道路設計が右ハンドル車を前提としているため、左ハンドル車の場合、緊急回避時にドライバーの反応がわずかに遅れるリスクが増す可能性が指摘されています 。これは、ドライバーが慣れない環境下で瞬時の判断を求められる際に、視覚情報や操作系の配置が最適化されていないことによる潜在的な安全上の懸念です。
日常生活での運転のしやすさ
日常生活での運転においては、右ハンドル車が日本国内での運転に慣れている人にとって最も運転しやすい選択肢であり、普段使いに最適であるとされています 。
一方、左ハンドル車は輸入車特有のステータス感や特別感を味わえるため、車好きにとって大きな魅力となります 。しかし、日本の左側通行に適応するには慣れが必要であり、特に運転初期には戸惑うことが多いとされています 。長距離運転や高速道路においては、左ハンドル車が輸入車の本来の設計思想に基づいているため、快適性が高いと感じるオーナーもいますが、日本の高速道路では右ハンドル車の方がスムーズな運転がしやすい傾向があります 。
左ハンドル車が「輸入車特有のステータス感」や「特別感」を提供する一方で、日本の道路環境での実用性(駐車場、料金所、狭い道、緊急時対応)には明確なデメリットがあるという対比は、消費者が車両を選択する際に、心理的な満足度(ステータスや独自性)と日常的な実用性・利便性との間でトレードオフを強いられることを示しています。
このトレードオフは、車両が単なる移動手段ではなく、個人のアイデンティティやライフスタイルを表現する手段でもあるという消費者行動の側面を浮き彫りにします。特に「車好き」や特定のブランドに強いこだわりを持つ層にとっては、実用的な不便さよりも、運転体験や所有の喜びといった感情的な価値が優先される傾向があるという連鎖的な影響が考えられます。
左右ハンドル車のメリット・デメリット
左右のハンドル位置は、運転のしやすさ、安全性、利便性、そして所有の満足度に多岐にわたる影響を与えます。それぞれのメリットとデメリットを理解することは、自身のライフスタイルに合った選択をする上で不可欠です。
表2:左右ハンドル車の主要な違い比較
以下の表は、左右ハンドル車の主要な違いを簡潔に比較したものです。
項目 | 右ハンドル車 | 左ハンドル車 |
運転席位置 | 進行方向に対し右側 | 進行方向に対し左側 |
標準通行帯 | 左側通行国(日本、イギリスなど) | 右側通行国(アメリカ、ドイツなど) |
ウィンカー/ワイパーレバー | 日本車はウィンカー右、ワイパー左(JIS) | 輸入車はウィンカー左、ワイパー右(ISO) |
ペダル配置の傾向 | タイヤハウスの影響でやや左寄りになりがち | タイヤハウスの影響を受けにくく理想的な配置が可能(特にMT車) |
ヘッドライト光軸 | 左側(路肩側)を明るく照射(対向車への配慮) | 右側(対対向車線側)を明るく照射(対向車眩惑の可能性) |
日本の駐車場/料金所 | 非常に便利 | 不便(運転席が外側) |
日本の視界 | 道路全体を捉えやすく安心感が高い | 右折・追い越し時に視界が妨げられることがある |
MTシフト操作性 | 左手操作。払い退けたり引き上げる動作 | 右手操作。引き寄せたり押し上げる動作(人間工学的に自然) |
特別感/ステータス | 一般的 | 輸入車ならではの特別感、ステータス性がある |
メンテナンス | 部品調達が容易、対応工場が多い | 部品調達に時間がかかる場合あり、対応工場確認が必要 |
右ハンドル車の利点と欠点
左ハンドル車の利点と欠点
考察
車両選択は単一の基準(例:価格、燃費)ではなく、運転のしやすさ、安全性、利便性、所有の喜び、メンテナンス性といった多面的な要素の組み合わせによって決定されます。
特に左ハンドル車の場合、実用的なデメリットを上回る「特別感」や「本来のドライビング体験」といった感情的・体験的なメリットが選択の動機となる点が、興味深い対比を生み出しています。
この多面性は、ユーザーが自身のライフスタイルや価値観(例:日常使い重視 vs. 趣味性重視)に基づいて、各要素に異なる重み付けを行うという意思決定プロセスに繋がります。つまり、最適なハンドル位置は客観的な優劣だけでなく、主観的なニーズによって変動するという連鎖的な影響があり、これが多様な自動車市場を形成する一因となっています。
左ハンドル車のデメリットとして挙げられる「日本の道路環境への慣れが必要」や「操作が難しい」、そして「ヘッドライトの交換費用」や「部品調達の遅延」は、輸入車を日本で運用する際に発生する「適応コスト」を具体的に示唆しています。
このコストは金銭的なものだけでなく、運転のストレスやメンテナンスの手間といった非金銭的なものも含む、より広範な概念です。輸入車、特に左ハンドル車を選ぶことは、単に車を購入するだけでなく、その車を日本の環境に「適応させる」ための追加的な努力や費用、あるいは妥協が必要になるという連鎖的な影響があります。
これは、購入後の満足度を左右する重要な要素であり、購入前の十分な情報収集と試乗の必要性を強調する根拠となります。
左ハンドルと右ハンドルの違い

海外でドライブする場合、まずはドライブする国が左側通行なのか、右側通行の国なのか確認しましょう。
現在は基本的に左側通行であれば右ハンドル、右側通行であれば左ハンドルです。
右ハンドル、左ハンドルと左右が逆になることで、運転操作もだいぶ異なります。大きな違いは以下2つでしょうか。ブレーキ、アクセルの配置は一緒です。
1.ウィンカースイッチ、ワイパーのスイッチについて
まず、左ハンドルの車の場合は、ウィンカースイッチ、ワイパーのスイッチが右ハンドルの車とは逆になりま
す。つまり、ウィンカースイッチは左側にあります。日本車と同じ右側の感覚で操作すると、ワイパーが作動
します。晴れの日でフロントガラスが綺麗な状態にも関わらず、ワイパーを動かしている車がいたら、左ハン
ドル車に慣れていない人でしょう。
2.シフトレバーについて
マニュアル、オートマともに運転席、助手席の間にシフトレバーがあります。上の写真からわかる通り、ギアを入れるポジション(1速から5速、R)は左ハンドル、右ハンドルで違いはなく共通となっています。
右ハンドルの場合は左手で操作しますが、左ハンドルの場合は、右手での操作することになります。オートマ車はそれほど違和感ないのですが、マニュアル車の場合は、ロー(1速)が体に一番近い位置に来ます。
右 ハンドルの場合は左手で体から離れた一番奥に押し込む感じなのですが、右に座って左手で操作する日本車に比べて、操作性は異なります。
また、欧州はマニュアル車が多くオートマ車の在庫が少ないレンタカー会社もあるので、注意が必要です。
上記の違いをしっかりと理解して、安全な運転を心掛けましょう!!
あなたのライフスタイルに合った選択のために
左ハンドル車と右ハンドル車の違いは、単に運転席の位置が異なるという表面的なものに留まりません。車両の設計思想、操作系の配置、走行時の安全性、そして日常生活における実用的な利便性に至るまで、多岐にわたる影響を及ぼしています。
日本の道路環境においては、右ハンドル車がその設計上、運転のしやすさ、視界の確保、駐車場や料金所での利便性など、実用面で圧倒的に有利です。これは、日本の交通インフラが右ハンドル車を前提に構築されているためであり、日常使いにおいては最も合理的でストレスの少ない選択肢と言えるでしょう。
一方で、左ハンドル車には、輸入車ならではの「特別感」や「ステータス性」という独自の魅力があります。特にマニュアルトランスミッション車においては、ペダル配置やシフト操作の人間工学的な優位性が指摘され、本来の設計思想に近いドライビング体験を求める愛好家にとっては、その不便さを上回る価値を提供します。
最終的な選択は、ユーザー自身のライフスタイルや運転目的によって異なります 。日常の通勤や買い物など、実用性と利便性を最優先するのであれば、右ハンドル車が適しています。しかし、車を単なる移動手段としてだけでなく、趣味や自己表現の手段と捉え、独特の運転体験や所有の喜びを重視するのであれば、左ハンドル車も魅力的な選択肢となり得ます。
試乗の重要性、メンテナンスの考慮
特に左ハンドル車に興味がある場合は、机上の知識だけでなく、必ず試乗を行い、実際の操作性や視界、日本の道路環境での感覚を自身で確認することを強く推奨します 。これは、複雑な技術的・実用的な情報を体系的に理解した上で、自身のニーズに合った「情報に基づいた意思決定」を行うための最も確実な方法です。試乗は、レポートが単なる情報提供に留まらず、ユーザーの行動変容を促す役割も果たします。
また、車両の選択は購入時だけでなく、その後の所有期間全体にわたる体験に影響を与えるため、メンテナンスや部品交換のしやすさも重要な検討事項です 。特に輸入車の場合、部品調達に時間がかかったり、対応できる整備工場が限られたりする可能性があるため、購入前に信頼できる整備工場が近くにあるかを確認しておくことも、長期的な満足度を左右する重要なポイントとなります。
車両の「所有体験」は、運転そのものだけでなく、維持管理の容易さやコスト、そして緊急時の対応能力といった要素によって総合的に形成されるため、これらの事前の確認が長期的な満足度に直結するという重要なメッセージを伝えます。
海外ドライブ失敗体験
海外の多くの国でドライブをして、多くの失敗をしました。幸いにも事故は起こしてないですが、本ブログの読者に同じ失敗をして欲しくないので、私の体験を共有します。
行き先の国の交通ルール・道路標識の情報をしっかりインプットしておくことが肝心です。インプットしたつもりでも、慣れない環境なので、ルールが飛んでしまうこともあります。細心の注意を払って安全に運転したいものです。ウィンカーを出そうとして、ワイパーを動かす…私自身も海外でのドライブ経験は数多くありますが、ウィンカーを出そうとして、ワイパーを動かしてしまうことは、よくあります(笑)
なぜ、晴れの日にワイパーを動かしているんだろう??恥ずかしいですね。長年慣れ親しんだ操作を変えることは、意識してもなかなか難しいことです。2速から5速にギアを入れてしまう(3速を飛ばしてしまう…)日本・海外関係なく、(滅多にいませんが)マニュアル車好きは良くやってしまうミスです。
現在の日本はオートマ車の運転しかしたことがない人が多いので、慣れないマニュアル車は運転しないほうが良いでしょう。海外の交通ルールを知らずに、右折(日本の場合は左折にあたる)時は赤信号でもOKなのに停止してしまうクラクションを鳴らされて、気付いたことがあります。
中央分離帯がない片側1車線道路で、右折(日本の場合は左折)した際に、無意識に逆走してしまう右折時に対向車がいない場合は、(右側通行の国なのに)無意識に左側通行をしてしまう。遠くから対向車が迫ってきて、自分が逆走していることに気付く。道に迷うこの体験が一番多いです。
英語版のGPSが分かりずらくて、道に迷ってしまうケース。
紙の道路地図を参照したり、街の人に聞いたり、原始的ですが携帯の方位磁針アプリで方角を頼りに目的地にたどり着いたこともあります。郊外は良いですが、市街地が分かりずらいし大変な思いをしました。
ギリシャのアテネでは到着が夜だったこともあって、一方通行だらけで、空港からホテルにたどり着かず、空港にレンタカーを置いて、ホテルまでバスで移動したこともありました。何のためにレンタカーを借りたのか…翌日からの郊外ドライブでレンタカーが活躍したので、無駄にはならなかったですが…

海外ドライブのまとめ
・世界の分布を見ると、76の国(地域)が左側通行で、163の国(地域)が右側通行になっています。行き先の国が左側通行なのか、右側通行なのか確認しましょう。
・左ハンドルの車の場合は、ウィンカースイッチ、ワイパーのスイッチが右ハンドルの車とは逆になります。
国際免許を取得していない方は、国際免許の取り方 を参照ください。
また、国際免許で運転できる国については、108の国と地域 を参照ください。
詳細情報は、外務省の「海外安全ホームページ」を参照してください。
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