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泉州(世界遺産)観光ガイド|22の構成資産・行き方・登録基準

泉州の街並みと開元寺の東西の双塔

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中国・福建省の港町泉州(せんしゅう)は、2021年に世界遺産へ登録された「海の交易都市」です。宋・元の時代(10〜14世紀)、アラビア語や西洋の文献で「ザイトン(Zayton)」と呼ばれたこの港には各地の商人が集まり、仏教寺院とイスラム教のモスクが同じ街に並ぶ国際都市が生まれました。世界遺産は、その繁栄を支えた役所跡・寺院・橋・埠頭・窯跡など22の構成資産で成り立っています。

ただし構成資産は旧市街から内陸の山あいまで広く散らばっており、「どこを見れば泉州の世界遺産を見たことになるのか」が分かりにくい遺産でもあります。本記事では、22の構成資産の一覧と見どころ、厦門(アモイ)からの行き方、モデルコースといった旅行情報と、登録基準や2018年の「情報照会」といった世界遺産検定のポイントを、ユネスコの公式資料にもとづいて整理します。

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この記事を書いた人:kaz-travel

全世界を旅することを目的に、2026年9月現在で66ヵ国(通過しただけの国も含む)を旅するサラリーマントラベラーです。kaz-travelは、「忙しいサラリーマンでも、最大限に世界を旅する方法」を実体験(体験したい)に基づき発信するトラベルサイトです。2016年〜2020年には中国に駐在。

このサイトでは、世界一周航空券の具体的な活用術から、旅先でのトラブル対策、そして特に力を入れている「詳細な世界遺産訪問ガイド」まで、あなたの旅を豊かに、そして安全にするためのノウハウをお届けします。

目次

泉州とは?世界遺産の基本データ

泉州の世界遺産は、行政の施設、宗教建築と石像、文化的な記念地や碑、陶磁器と鉄の生産地、そして橋・埠頭・航路の目印となった塔からなる交通網を、ひとまとまりで評価したシリアル・ノミネーション(連続性のある資産)です。UNESCOは、生産・輸送・販売を結びつけた空間の構造と、それを支えた制度・社会・文化が、泉州を東アジア・東南アジアの交易網の拠点へ押し上げたことを評価しています。

名称泉州:宋・元時代の中国における世界の中心地(世界遺産検定の表記)
(英語名:Quanzhou: Emporium of the World in Song-Yuan China。「〜世界のエンポリウム」と訳されることもあります)
所在地中華人民共和国 福建省 泉州市
登録年2021年(第44回世界遺産委員会・オンライン開催、中国の福州から議事進行)
登録基準(4):人類の歴史上において、重要な時代を例証する、ある形式の建造物、建築物群、技術の集積または景観の優れた例である。
資産面積536.08ha(緩衝地帯11,126.02ha)
構成資産22件(開元寺・清浄寺・天后宮・洛陽橋・安平橋・徳化窯址など。一覧は後述)

世界遺産センター(UNESCO公式):Quanzhou: Emporium of the World in Song-Yuan China

中国の報道によると、この登録で中国の世界遺産は56件目になりました。22の構成資産のおおまかな位置関係は、次の模式図で確認できます。

泉州の世界遺産・22の構成資産の位置関係(模式図)
泉州の世界遺産・22の構成資産の位置関係(模式図。実際の距離・方角を正確に示すものではありません)

「ザイトン」と呼ばれた宋・元時代の国際貿易港

泉州が栄えた10〜14世紀は、UNESCOが「アジアの海上交易にとって非常に重要な時期」と位置づける時代です。泉州が世界有数の港になった背景を、3つのポイントで押さえておきましょう。

川と海が出会う場所にあった港

UNESCOの説明によると、泉州の交易の仕組みは「川と海の合流点にある都市」を中心に、南東の海で世界とつながり、北西の山地で陶磁器や鉄を生産し、それらを水路と陸路の交通網で結ぶ構造でした。22の構成資産が、海沿いの埠頭から内陸の窯跡・製鉄遺跡まで広がっているのはこのためです。

市舶司の設置と「ザイトン」の名

北宋の1087年には、海上貿易を管理する役所「市舶司(しはくし)」が泉州に置かれました。宋代には広州を上回る貿易額を誇ったとされ、元代にはマルコ・ポーロやイブン・バットゥータが「ザイトン」の名でその繁栄を伝えています。また泉州は、町に刺桐(しとう。デイゴの仲間)の木が多かったことから「刺桐城」とも呼ばれました。

多様な信仰が共存した国際都市

交易で人が集まった泉州には、仏教の開元寺、イスラム教の清浄寺とイスラム教徒の墓、航海の女神・媽祖を祀る天后宮、道教の老子像、孔子を祀る文廟、さらにマニ教に関わる石像まで、さまざまな信仰の遺構が残っています。一方、のちに港に土砂がたまって船の出入りが不便になり、清代に福州や厦門が開港すると、泉州は地方の港の一つになっていきました。

22の構成資産を一覧で整理

22の構成資産を、場所ごとに4つのエリアに分けて一覧にしました。「種類」は、UNESCOが挙げる5つの要素(行政、宗教、文化的な記念地、生産、交通)をもとに当サイトで整理したものです。

エリア構成資産種類
泉州古城(7件)開元寺、清浄寺、天后宮宗教
泉州古城泉州府文廟文化的な記念地
泉州古城市舶司遺址、徳済門遺址、南外宗正司遺址行政
古城の周辺(9件)真武廟、イスラム教聖墓、老君岩造像宗教
古城の周辺九日山祈風石刻文化的な記念地
古城の周辺洛陽橋、順済橋遺址、江口碼頭交通
古城の周辺磁灶窯址生産
古城の周辺草庵摩尼光仏造像宗教
南の海沿い(4件)石湖碼頭、六勝塔、万寿塔、安平橋交通
内陸の山間部(2件)徳化窯址、安渓青陽下草埔冶鉄遺址生産

古城の7件は旧市街の中にまとまっているため、徒歩で回れます。一方で徳化窯址や安渓の製鉄遺跡は内陸の山あいにあり、訪れるには半日〜1日がかりの移動を見込んでおきましょう。

見逃せない構成資産と見どころ

22件すべてを回るのは大変なので、初めての泉州で優先したい構成資産を、エリアごとに紹介します。

開元寺:泉州のシンボル・東西の双塔

古城の中心にある開元寺は、7世紀に創建され、10世紀に主要な伽藍が整った仏教寺院です。境内の東西に立つ石造の双塔(東塔=鎮国塔、西塔=仁寿塔)は高さ40mを超え、泉州の街のどこからでも目に入るランドマークになっています。寺の前を通る西街は古い街並みが残る通りで、散策の起点にぴったりです。

清浄寺:中国最初期のイスラム建築

清浄寺は、UNESCOが「中国で最も早い時期のイスラム建築の一つ」と紹介する11世紀のモスクです。中国の寺院建築とはまったく違う、尖頭アーチの石造りの門が印象的で、海を越えてやって来たイスラム教徒の商人たちの存在を今に伝えています。古城の東の郊外にあるイスラム教聖墓とあわせて見ると、泉州のイスラム社会の広がりがよく分かります。

泉州の清浄寺(イスラム教のモスク)の石造りの門
清浄寺の石造りの門(写真: Windmemories / CC BY-SA 4.0、リサイズして掲載)

天后宮・府文廟・市舶司遺址:古城に残る信仰と行政の跡

古城の南部には、航海の守り神・媽祖を祀る天后宮、城門の遺構である徳済門遺址が近くにあります。孔子を祀る泉州府文廟、海上貿易を管理した市舶司遺址、宋の皇族を管理した役所の跡である南外宗正司遺址も古城の中にあり、「交易を支えた制度」を物語る構成資産です。遺址(遺跡)は建物が残っていない場所も多いので、案内板で当時の姿を想像しながら歩くのがおすすめです。

洛陽橋・安平橋:海に架けられた宋代の石橋

古城の北東、洛陽江の河口に架かる洛陽橋は、北宋の1053〜59年に建設された石橋です。南西の海沿いにある安平橋は、南宋の紹興年間(12世紀)に建てられた全長2kmを超える石橋で、「五里橋」とも呼ばれます。どちらも泉州と各地を結んだ交通網の一部として登録されています。

河口に架かる泉州の洛陽橋
河口に架かる洛陽橋(写真: N509FZ / CC BY-SA 4.0、リサイズして掲載)

九日山・老君岩・草庵:郊外の石刻と石像

古城の北西にある九日山祈風石刻は、海を渡る船のために順風を祈った「祈風」の儀式を記録した石刻群です。古城の北の清源山には道教の祖・老子をかたどった大きな石像老君岩造像があります。また南西の草庵摩尼光仏造像は、UNESCOの中国語の説明で「世界で唯一現存するマニ(摩尼)の石像」とされる、マニ教に関わる珍しい石像です。

石湖碼頭・六勝塔・万寿塔と窯跡:港と生産の現場

泉州湾沿いの石湖碼頭や、河口近くの江口碼頭は、UNESCOが「交易と防衛の両面で重要だった」と説明する石造りの埠頭です。六勝塔と万寿塔は、UNESCOが「航海者を導いた塔」と説明する航路の目印でした。輸出品の生産地として、磁灶窯址・徳化窯址(陶磁器)と安渓青陽下草埔冶鉄遺址(鉄)も登録されており、「作る→運ぶ→売る」という交易の流れ全体を、構成資産でたどれるようになっています。

なぜ世界遺産?登録基準(iv)と検定のポイント

泉州は、登録基準(iv)のみで登録されています。ここでは、UNESCOの評価内容と、検定で狙われやすい「登録までの経緯」を整理します。

登録基準(iv):世界規模の交易拠点を支えた仕組みの証拠

UNESCOは、泉州の構成資産が、10〜14世紀のアジアの海上交易が大きく栄えた段階で、泉州を世界規模の交易拠点に押し上げた「地域一体の構造」と、制度・交通・生産・販売・社会文化といった主な要因を際立って示していると評価しました。あわせて、泉州が東アジア・東南アジアの経済と文化の発展に大きく貢献したことも示している、としています。

2018年は「情報照会」:名称も基準も変えて再挑戦

泉州は一度で登録されたわけではありません。2018年の第42回世界遺産委員会(バーレーンのマナーマ)では、「古泉州(ザイトン)の歴史的建造物と遺跡」(英語名:Historic Monuments and Sites of Ancient Quanzhou (Zayton)、当サイト仮訳)の名称で審議され、情報照会の決議を受けました。このとき委員会は、登録基準(ii)(iii)(vi)を満たす可能性が高いとしたうえで、基準の証明をさらに絞り込むことなどを求めています。

その後、推薦内容を見直した泉州は、2021年に現在の名称で、基準(iv)のみで登録されました。「2018年に可能性を指摘された基準」と「実際に登録された基準」が異なる点は、ひっかけ問題に使われやすいので注意しましょう。なお2018年の決議では、「海のシルクロード(Maritime Silk Routes)」をテーマにした研究への協力も勧告されています。

あわせて覚えたい中国の世界遺産

同じ福建省の世界遺産や、交易・元の時代という共通点を持つ世界遺産を表にまとめました。登録年と登録基準をセットで比べておくと、選択肢で迷いにくくなります。

関係する世界遺産登録年・登録基準泉州との関係
武夷山1999年(2017年範囲変更)・(iii)(vi)(vii)(x)同じ福建省の複合遺産
福建土楼群2008年・(iii)(iv)(v)同じ福建省の文化遺産。泉州と同じく基準(iv)を含む
シルク・ロード:長安-天山回廊の交易網2014年・(ii)(iii)(v)(vi)陸の交易路の世界遺産。海の交易拠点の泉州と対比して覚える
元の上都遺跡2012年・(ii)(iii)(iv)(vi)泉州が栄えた元の時代の都。マルコ・ポーロゆかりの地でもある

このほか福建省には、厦門の「鼓浪嶼(コロンス島):歴史的共同租界」(2017年・基準(ii)(iv))もあります。泉州(2021年)と合わせて、福建省の文化遺産を登録年順に整理しておくと安心です。陸のシルクロードとの違いは、長安-天山回廊の解説記事で確認してみてください。

泉州への行き方

泉州は福建省の南部、厦門(アモイ)と福州の間にあります。日本からの移動と、現地での移動に分けて紹介します。

日本から泉州へ

泉州の玄関口は、市内の泉州晋江国際空港と、隣の厦門高崎国際空港です。日本からの直行便の有無や就航都市は時期によって変わるため、航空券を探すときは「泉州(晋江)」と「厦門」の両方で検索し、上海・福州などの経由便も比較すると選択肢が広がります。

日本国籍の場合、2026年10月時点では30日以内の観光などはビザ(査証)免除の措置が取られています(2026年12月31日までの措置として延長が発表されています)。条件や期限は変更されることがあるため、在日本中国大使館や外務省 海外安全ホームページ(中国)で最新情報を確認してください。

厦門から高速鉄道で泉州へ

厦門から泉州へは高速鉄道が便利です。2023年9月28日に全線開業した福厦高速鉄道は、福州から泉州・厦門を経て漳州へ向かう路線で、開業時の報道では福州〜厦門が最速55分で結ばれました。泉州には泉州南駅などの駅があり、厦門北駅から乗れます。列車や駅によって所要時間が異なるため、到着駅から古城までの距離も含めて、予約時に確認しておきましょう。

市内・郊外の移動

古城の7件(開元寺・清浄寺・天后宮など)は徒歩で回れます。洛陽橋・九日山・老君岩などの郊外の構成資産へは、タクシーや配車アプリを使うのが効率的です。内陸の徳化窯址・安渓の製鉄遺跡まで足をのばす場合は、車をチャーターして1日かけて回る計画を立てましょう。

泉州と同じ福建省には、武夷山や福建土楼といった世界遺産もあります。厦門を拠点にすれば、土楼と泉州を組み合わせた旅程も組みやすくなります。

中国旅行全体の準備は、中国旅行の完全ガイドにまとめています。

観光日数の目安と2日モデルコース

古城の構成資産だけなら1日で回れますが、郊外の石橋や石刻まで見るなら2日あると余裕をもって回れます。以下は目安のコースです。

1日目(古城):開元寺→清浄寺→府文廟→天后宮

  • 午前:開元寺で東西の双塔を見学し、門前の西街を散策
  • 午後:清浄寺と泉州府文廟を見学したあと、南へ歩いて天后宮・徳済門遺址へ
  • 夕方:市舶司遺址など、古城に点在する遺址を案内板で確認しながら散策

2日目(郊外):洛陽橋→イスラム教聖墓→老君岩→九日山

  • 午前:北東の洛陽橋を歩いて渡り、古城の東のイスラム教聖墓へ
  • 午後:北の清源山で老君岩造像を見たあと、北西の九日山祈風石刻へ

3日目に余裕があれば、南の安平橋や海沿いの石湖碼頭・六勝塔、草庵摩尼光仏造像を回るのがおすすめです。各施設の入場料・開放時間は施設ごとに異なり、変更されることもあるため、訪問前に現地の案内や地図アプリで確認してください。

ベストシーズン

泉州は温暖な気候ですが、夏は暑く湿度も高くなり、台風の影響を受けることもあります。屋外を長く歩く構成資産めぐりは、春や秋の過ごしやすい時期が快適です。春節(旧正月)や10月1日からの国慶節の大型連休は混雑するため、できれば避けると安心です。

まとめ

泉州は、2021年に登録基準(iv)で世界遺産となった、宋・元時代の海の交易都市の「仕組み」そのものを伝える遺産です。最後に要点を振り返ります。

  • 検定対策:2021年登録・基準(iv)のみ・構成資産22件。検定表記は「泉州:宋・元時代の中国における世界の中心地」。2018年は別名称で情報照会(基準(ii)(iii)(vi)の可能性を指摘)。アラビア語・西洋の文献での呼び名は「ザイトン」
  • 旅行:厦門から福厦高速鉄道で泉州へ。古城の7件は徒歩、郊外は車で回り、2日あると余裕をもって見学できる

中国のほかの世界遺産や、検定で問われる世界遺産を横断的に調べたいときは、世界遺産の大辞典も活用してください。

中国への移住に興味がある方は、中国(大連)海外生活のページも参考にしてください。移住先の選定から移住準備、移住中の情報を発信しています。

よくある質問

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トラブル

泉州はいつ世界遺産に登録されましたか?登録基準は?

2021年7月25日、第44回世界遺産委員会(オンライン開催、中国の福州から議事進行)で登録が決まりました。登録基準は(iv)の1つだけです。

泉州の世界遺産の構成資産はいくつありますか?

22件です。開元寺・清浄寺・天后宮など7件が古城(旧市街)にあり、そのほか洛陽橋・安平橋などの石橋、石湖碼頭などの埠頭、六勝塔・万寿塔、徳化窯址などの窯跡や製鉄遺跡が、海沿いから内陸の山あいまで点在しています。

「ザイトン」とは何ですか?

10〜14世紀のアラビア語や西洋の文献で、泉州を指して使われた呼び名です。マルコ・ポーロやイブン・バットゥータも、この名で泉州の港の繁栄を伝えています。

2018年に登録されなかったのはなぜですか?

2018年の第42回世界遺産委員会では、「Historic Monuments and Sites of Ancient Quanzhou (Zayton)」の名称で審議され、情報照会となりました。委員会は登録基準(ii)(iii)(vi)を満たす可能性が高いとしつつ、基準の証明の絞り込みや、構成資産ごとの範囲・緩衝地帯の説明、管理体制の強化などを求めました。見直しを経て、2021年に基準(iv)で登録されています。

アイキャッチ画像: Windmemories / CC BY-SA 4.0(元画像をトリミング・リサイズして掲載)

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中国旅行全体の計画には、中国旅行の完全ガイド(基本情報・世界遺産マップ・効率ルート)もあわせてご覧ください。

このテーマ以外の重要用語もまとめて確認したい方は、世界遺産の大辞典をご覧ください。

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