世界遺産の基礎知識についてまとめます。世界遺産という言葉は聞いたことあるけど、世界遺産とは何を目的にどのような基準で登録されるのか、確認していきましょう。世界遺産検定を受検する方は、試験全体の20~25%を占める重要なパートとなります。
アテネ憲章
アテネ憲章は、1931年にギリシャのアテネで開催された国際連合に関する会議で採択された文書です。この会議は、第二次世界大戦中に連合国として協力する国々の代表者によって開催されました。アテネ憲章は、連合国が共同して戦争の勝利後に構築するべき国際秩序についての基本的な原則を定めています。
アテネ憲章は以下の4つの主要な原則を採用しました。
1.平和の維持と安全保障: 国際連合は、戦後も平和を維持し、安全保障を確保するための手段を講じることが期待されました。
2.国際協力と経済的な進展: 国際連合は、国家間の協力を促進し、経済的な進展を推進することを目的としていました。これは、戦後の復興と発展に向けた共同の努力を含んでいます。
3.人権と基本的自由の尊重: アテネ憲章は、全ての人々が基本的な人権と自由を享受できるようにすることを重視しました。これには、差別のない権利、言論・信仰の自由、労働者の権利などが含まれます。
4.国際法の尊重と発展: 国際連合は、国際法の尊重と発展を奨励し、国家間の紛争の平和的な解決を促進することを目指しました。
アテネ憲章は国際連合の前身となり、その後の国際連合憲章の起草に影響を与えました。国際連合は、1945年にサンフランシスコで開催された国際連合憲章の採択に続いて正式に設立されました。
世界遺産の基礎知識1
世界遺産の基礎知識2-世界遺産条約
世界遺産の基礎知識3-諮問機関とユネスコ
世界遺産の基礎知識4-関係する概念
世界遺産の基礎知識6-世界遺産リスト記載までの流れ
日本の世界遺産一覧
ヴェネツィア憲章
ヴェネツィア憲章は、1994年にイタリアのヴェネツィアで開催された会議にて採択された記念物や建造物、遺跡などの保存・修復に関する憲章です。
・記念物や建造物、遺跡などを保護すること
・修復の際には建設当時の工法、素材を尊重すること
・推測による修復の禁止、修復の際には歴史的に誤解を与えないよう修復箇所を明らかにすること
1931年アテネ憲章の「文化遺産を尊重し保護・修復する」という理念を尊重しつつも、修復方法の考え方が決定的に異なっている。
修復にあたって科学的かつ考古学・歴史的な検証が必要で、オリジナルの材料や色彩、建築環境などを可能な限り保存することが求められる。これが真正性の概念となる。
また、伝統的な技術が明らかに不適切である場合のみ、近代的な技術を用いることができる。
ハーグ条約
ハーグ条約は、1954年にオランダのハーグで採択された条約です。
国際紛争や内戦、民族紛争などから文化財を守るための基本方針を定めています。
詳細な内容については、外務省ウェブサイトをご参照ください。
文化財の不法な輸入、輸出及び所有権譲渡の禁止並びに防止の手段に関する条約
文化財の不法な輸入、輸出及び所有権譲渡の禁止並びに防止の手段に関する条約(通称:文化財不法輸出入等禁止条約)は、文化財の不法な海外流出を規制し、原産国や原所有国での保存・保護を原則とする国際的な条約です。
主な内容は以下の通りです。
・文化財の定義:文化財不法輸出入等禁止条約では、文化財を特定の基準で定義しています。
・輸出規制:他の締約国で盗まれた文化財(所蔵品目録に属するもの)の輸入を禁止します。
・回復・返還措置:原産国の要請により、文化財の回復・返還に適切な措置をとります。ただし、善意の購入者に対して適正な補償金が支払われることを条件とします。
・自国の文化財の輸出規制:自国の文化財の輸出には許可を受けることを義務付け、輸出許可書の無いものの輸出を禁止します。
この条約は、1970年にユネスコ第16回総会で採択され、1972年に発効しました。日本も2002年に批准し、現在の締約国数は125か国です。
詳細な内容については、外務省ウェブサイトやユネスコのウェブサイトをご参照ください。
人間環境宣言(ストックホルム宣言)
人間環境宣言は、1972年にスウェーデンのストックホルムで採択された宣言で、開発問題と環境保全について、取り組み原則をまとめたものです。
自然環境の保護・保全が人類の福祉や経済発展に重要であることを謳っています。
詳細な内容については、環境省ウェブサイトをご参照ください。
公的または私的の工事によって危機にさらされる文化財の保存に関する勧告
ヌビアの遺跡群の救済活動を受けて、1968年に採択された勧告です。
社会的・経済的な発展による変化の調和を図りながら保護することが各国の義務として求めています。
公的または私的の工事によって危険にさらされる文化財の保存に関する勧告は、1968年11月19日の第15回ユネスコ総会で採択されたものです。この勧告は、文化財が世界の諸国民の伝統、創造力、社会的および経済的発展に依存する重要な要素であることを考慮し、文化財をその歴史的および芸術的重要性に応じてできる限り保存することが不可欠であると述べています。また、文化財の保存と公開は相互理解を増進し、平和に貢献する手段であるとも指摘しています。
この勧告は、文化財の保護と社会的および経済的発展との調和を図るため、政府が適切な計画を参考にして保存と変化の両方の要求に応えることを強調しています。さらに、文化財を保存し公開することは、国内および国際観光の振興にも寄与するとされています1。
この勧告は、文化財の意義を理解し、それを尊重し愛着を持つことが重要であり、国民自身が文化財に対して尊敬と愛着を抱くことで、最も確実な保証が得られると考えられています。
詳細な内容については、文部科学省ウェブサイトをご参照ください。
歴史的都市景観の保護に関する宣言
2005年に世界遺産と現代建築に関するウィーン覚書(ウィーン・メモランダム)が採択されたことを受けて「歴史的都市景観の保護に関する宣言」が採択された。
歴史的都市景観の概念を保護計画に含むことが推奨されている。
歴史的都市景観に関する勧告は、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)によって採択されたもので、歴史的都市地区の保全、管理、および計画に関する戦略を現代建築、インフラ開発、および他の地域社会の開発プロセスと都市計画に統合することを強調しています1。
この勧告は、歴史的都市景観が我々の共通の文化遺産を表現し、世代ごとに形成され、人類の努力や願望についての重要な証言を構成していることを考慮しています。都市遺産は人類にとって社会的、文化的、および経済的な資産であり、多様性の中でその価値が認められています。
この勧告は、景観に依拠したアプローチが都市の同一性の維持に寄与することを考慮しており、持続可能な開発の原則が都市遺産の保護と持続可能な管理に不可欠であると強調しています。
歴史的都市景観の保護に関する宣言は、都市の成長と生活の質との間の持続可能な均衡を達成するための戦略を提供し、都市遺産の保全に向けた包括的で統合されたアプローチを推進しています。
詳細な内容については、文部科学省ウェブサイトをご参照ください。
水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(ラムサール条約)
1971年にイランのラムサールで採択された条約で、水鳥の生息地を保全するために湿地の生態系と生物多様性を保護するための計画を立てることが定められている。
ラムサール条約は、正式には「水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」という。水鳥が休んだりえさを取ったりするのに大切な湿地を保護するための国際的な取り決めで、150か国が加盟している。ラムサール条約は、国際的に重要な湿地を国際協力を通じて保全することを目的とし、水鳥の生息地としてだけではなく、湿地そのものが持つ機能・資源・価値を将来にわたり維持していこうとする条約です。
詳細な内容については、外務省ウェブサイトや環境省ウェブサイトをご参照ください。
世界遺産におけるボン宣言
2015年に採択された宣言で、IS(イスラム国)や武装集団による遺産の破壊を非難するとともに、国際社会の協力を呼び掛けたもの。
世界遺産条約履行に関する戦略的行動計画
2011年に採択された行動計画で、主に以下の6つが目標として定められている。
1.世界遺産の顕著な普遍的価値の維持
2.世界遺産リストの信頼性向上
3.環境・社会・経済的な要求を考慮した世界遺産の保護・保全
4.世界遺産のブランド力の向上
5.世界遺産委員会の行動力強化
6.世界遺産条約の決議の公開と実行
詳細は外務省ウェブサイトを参照ください。
世界遺産にかかる重要な出来事(年代別まとめ)
世界遺産検定では、重要な出来事を年代順に並べ替える問題が出題されます。そのため、どのような順番でどういった条約が採択されたのかを覚えておきましょう。
年号 | 出来事(条約の採択、組織の設立等) | 備考 |
1931 | アテネ憲章採択 | |
1945 | ユネスコ憲章採択 | |
1948 | IUCN設立 | 自然保護 |
1954 | ハーグ条約採択 | 文化財保護 |
1959 | ICCROM設立 | 英語サイト |
1960 | ヌビアの遺跡群の救済キャンペーン | |
1964 | ヴェネツィア憲章採択 | |
1965 | ICOMOS設立 | |
1971 | MBA計画 | |
1971 | ラムサール条約 | 水鳥の生息地保護 |
1972 | 人間環境宣言 | ストックホルム宣言 |
1972 | 世界遺産条約採択 | |
1978 | 最初の世界遺産12件の認定 | |
1992 | 日本が世界遺産条約批准 | |
1992 | 文化的景観の採択 | |
1994 | グローバル・ストラテジの採択 | |
1994 | 奈良文書の採択 | |
2002 | 4つのC(ブタペスト宣言) | |
2003 | 無形文化遺産の採択 | |
2005 | バッファーゾーンに関する作業指針の改定 | |
2007 | 5つのC | ニュージーランド |
2011 | 世界遺産条約履行に関する戦略的行動計画(2012-2022) | |
2012 | 京都ビジョン | |
2015 | ボン宣言 |
まとめ
・アテネ憲章は記念物や建造物、遺跡などの保存・修復に関する基本的な考え方。
・ヴェネツィア憲章は修復の際には建設当時の工法、素材を尊重するが謳われている。
・ハーグ条約は、国際紛争や内戦、民族紛争などから文化財を守るための基本方針を定めている。
・歴史的都市景観の保護に関する宣言は、歴史的都市景観の概念を保護計画に含むことが推奨されている。
・ラムサール条約は、水鳥の生息地を保全するために湿地の生態系と生物多様性を保護するための計画を立てることが求められる。
世界遺産に興味を持たれた方は、世界遺産検定に挑戦してみてはいかがでしょうか。
世界遺産検定公式HP