世界遺産の基礎知識6-世界遺産リスト記載までの流れ【世界遺産検定】

2023年11月26日

 

世界遺産の基礎知識6-世界遺産リスト記載までの流れ【世界遺産検定を受検する方は必須】

世界遺産の基礎知識についてまとめます。世界遺産という言葉は聞いたことあるけど、世界遺産とは何を目的にどのような基準で登録されるのか、確認していきましょう。世界遺産検定を受検する方は、試験全体の20~25%を占める重要なパートとなります。

世界遺産リスト記載までの流れ(概要)

世界遺産リスト記載までの流れは、概ね以下の通り。

・締約国は世界遺産センターの協力のもと暫定リストを作成(英語かフランス語)する。
・世界遺産センターは暫定リストを関係機関に伝達し、世界遺産センターのサイトで公開する。
・暫定リストに載っていない遺産は推薦が不可となる。
・2月1日までセンターに推薦書提出(前年9月30日まで草案を提出しコメント得ることも可)する。
 (2月1日〆が多いが、登録遺産の状況報告書は12月1日〆(2014年決定))
・推薦書を世界遺産センターに提出してから登録まで1年半ほどの期間がかかる。

なお、日本の場合は9月頃に関係省庁連絡会議で推薦遺産を決定し、1月に推薦書を閣議了解する。





推薦書の記載内容

推薦書には以下の項目を記載する。

 ・資産の範囲
 ・資産の内容
 ・登録の価値証明(あてはまる登録基準)
 ・保全状況及び資産へ影響を与える諸条件
 ・保全管理(保護のための法的措置、計画的措置、管理計画等)
 ・モニタリング(保全状況測定の指標等) 等

手続き等については、文化庁の文書を参照ください。

アップストリーム・プロセス

アップストリーム・プロセスは、2008年委員会で示され、2015年委員会で採用決定したプロセスのことで、委員会審議までの間に推薦国からの求めで諮問機関等が助言、相談、分析等の支援を行う仕組みのことです。

このプロセスは必須ではなく、任意となります。

アップストリーム・プロセスの詳細は、世界遺産マニア (worldheritage-mania.com)を参照ください。

プレリミナリー・アセスメント(事前調査)

プレリミナリー・アセスメント(事前調査)は、2021年の世界遺産委員会で新たに導入が決まったプロセスです。各国が推薦書を提出する前に諮問機関に評価を依頼して、早い段階から対話を通じた助言をもらい推薦書をブラッシュアップする取り組みです。

現在は移行期間ですが、2027年に推薦する遺産からは義務になります。この点がアップストリーム・プロセスとは異なります。つまり、2027年からは、世界遺産の推薦プロセスが「プレリミナリー・アセスメント」と「本推薦」の2段階になります。

日本で初めてプレリミナリー・アセスメントを用いて推薦するのが「彦根城」です。
プレリミナリー―・アセスメントの詳細は、世界遺産検定のブログを参照ください。

世界遺産登録の流れ

世界遺産登録の流れは以下の通りです。

1.各国政府が対応すること
 ・自国内の暫定リストを作成・提出する。
 ・暫定リストに記載された物件の中から、要件が整ったものを2月1日までに推薦する。

2.世界遺産センターが対応すること
 ・各国政府からの推薦書を受理する。
 ・物件の現地考査を依頼する。

3.IUCN(国際自然保護連合)、ICOMOS(国際記念物遺跡会議)が対応すること
 推薦された物件が自然遺産であれば、IUCNに依頼をする。文化遺産であれば、ICOMOSに依頼をする。

 ・世界遺産センターからの依頼を受けて、調査を実施する。
 ・世界遺産委員会の開催6週間前までに、調査結果(登録、情報照会、登録延期、不登録)を世界遺産センターに報告する。

4.世界遺産委員会が対応すること
 ・候補地を審査し、世界遺産リストの登録を決定する。
 ・委員国の意見がまとまらず投票の場合は、2/3以上同意で可決する。
 ・2022年の世界遺産委員会での審議される遺産から、推薦書を提出する国が審査に係る費用を自発的に支払う。(自発的な財政貢献
 ・2023年7月からはアメリカもユネスコに復帰し、分担金を支払うため、財政難はこれまでよりも改善される見込み。

世界遺産リストの詳細は、ユネスコ世界遺産リストを確認ください。

世界遺産と観光

世界遺産と観光には、相反する2つの側面がある。
1.正の側面
 ・世界遺産を資源とする観光は相互理解の有効な機会
 ・観光収入の遺産保護、インフラ整備、地域社会への分配は積極的に取り組むべき

2.負の側面
 ・オーバーツーリズム、遺産の破壊、汚染、住民の日常への支障等の課題
 ・上記の結果、遺産そのものの価値が観光化によって変質してしまう

負の側面を解決するため、世界遺産を永続的な観光資源として活用するための指針が示されている。
 ・1980年IUCN世界保全戦略「持続可能な開発」
 ・1992年リオデジャネイロで開催された国連環境開発会議で、「アジェンダ21」(観光を持続可能な開発に積極的に貢献できる経済分野)
 ・世界遺産委員会による「世界遺産と持続可能な観光計画」(観光資源として活用するための指針)

世界遺産の今後

世界遺産リストの不均衡・登録数が増えたことで世界遺産の冠の信頼性減少、環境破壊、遺産破壊、都市開発、過度の観光化などへの対応が求められる。
世界遺産を守ることは、自分の属する文化や自然を守り、価値を高めることにつながる。

 ・「点」で保護してきた遺産を周辺の景観も含んだ「面」で保護する施策
 ・バッファー・ゾーンを超える一帯を含めて評価する「遺産影響評価」

まとめ

1.世界遺産リスト記載までの流れ
 ・締約国は世界遺産センターの協力のもと暫定リストを作成(英語かフランス語)する。
 ・世界遺産センターは暫定リストを関係機関に伝達し、世界遺産センターのサイトで公開する。
 ・暫定リストに載っていない遺産は推薦が不可となる。
 ・2月1日までセンターに推薦書提出(前年9月30日まで草案を提出しコメント得ることも可)する。
  (2月1日〆が多いが、登録遺産の状況報告書は12月1日〆(2014年決定))
 ・推薦書を世界遺産センターに提出してから登録まで1年半ほどの期間がかかる。
 ・日本の場合は9月頃に関係省庁連絡会議で推薦遺産を決定し、1月に推薦書を閣議了解する。


2.アップストリーム・プロセスとプレリミナリー・アセスメント(事前調査)
 ・アップストリーム・プロセスは任意であるが、2021年の世界遺産委員会で新たに導入が決まったプレリミナリー・アセスメント(事前調査)は2027年に推薦する遺産からは義務となる。
 ・日本で初めてプレリミナリー・アセスメントを用いて推薦するのが「彦根城」

3.世界遺産登録の流れ
 ・2023年7月からはアメリカもユネスコに復帰し、分担金を支払う。

世界遺産に興味を持たれた方は、世界遺産検定に挑戦してみてはいかがでしょうか。
世界遺産検定公式HP