国境を越える世界遺産:最新版トランス・バウンダリー・サイト一覧【2024年最新版

知床 自然遺産

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「トランス・バウンダリー・サイト」とは、まさにその名の通り「国境を越える遺産」を指します。この概念がなぜこれほどまでに重要視され、注目を集めるようになったのか、その背景には人類の歴史と、地球規模での遺産保護への意識の高まりがあります。

トランス・バウンダリー・サイトの概念は、世界遺産検定を勉強する上で重要です。トランス・バウンダリー・サイトとして登録された世界遺産を巡る旅をしてみると、世界遺産をより深く知ることができて、旅が充実することでしょう。

旅行の計画や世界遺産検定の対策に役立つことを切に願っています。

世界遺産の基礎知識【世界遺産検定】

目次

トランス・バウンダリー・サイトとは

トランス・バウンダリー・サイトとは、「国境を越える遺産」のことです。

そもそも国境というものは人類の歴史が進むにつれて人為的に引かれたラインであり、国境線にとらわれない自然遺産の登録推薦の際には障壁となってしまっている側面がありました。

そこで、多国間の協力のもとで遺産を保護・保全していくためにトランス・バウンダリー・サイトという考え方が共通認識となっていきました。

しかし、これは自然遺産だけの話ではありません。文化遺産でも、かつて1つの民族・国家・文化圏であった地域が近代的な国家の成立で分断されてしまっている例は多数あります。そういったケースでも、トランス・バウンダリー・サイトの考え方は用いられます。

作業指針では、できる限り関係締約国が共同で登録推薦書を作成し、共同管理委員会・機関などを設立して遺産全体の管理を監督することが推奨されています。

また、現在は1つの締約国内にある世界遺産でも、拡大登録によってトランス・バウンダリー・サイトとして扱われるようになることもあります。

人為的な国境と自然・文化の連続性

国境は、私たちが歴史の中で便宜的に引いた「線」に過ぎません。しかし、自然の地形や生態系、あるいは特定の民族の文化や歴史は、これらの人為的な線で分断されるわけではありません。

たとえば、広大な山脈や河川、渡り鳥の移動経路などは、複数の国にまたがって存在します。また、古代の交易路や、かつて一つの帝国や文化圏に属していた地域なども、現代の国境によって分断されているケースが多くあります。

このような状況で、それぞれの国がバラバラに遺産を保護しようとしても、その本質的な価値(例えば、山脈全体の生態系、交易路全体の歴史的意義)を十分に保全することは困難です。トランス・バウンダリー・サイトという概念は、この人為的な国境を超え、自然や文化の持つ本来の連続性を尊重し、一体的に遺産を保護しようとするために生まれました。

国際協力の必要性と平和への貢献

国境を越える遺産を効果的に保護・管理するためには、関係する複数の国々が協力し合うことが不可欠です。例えば、共同で調査を行い、保全計画を策定し、資金を出し合うといった協力体制が求められます。

ユネスコの世界遺産委員会がトランス・バウンダリー・サイトの登録を推進することは、単に遺産を保護するだけでなく、異なる国家間での対話と協力を促すという大きな意味を持ちます。共通の遺産を守るという目標を通じて、政治的・文化的な壁を越えた国際的な連携が生まれることで、ひいては国家間の理解促進と平和構築にも貢献すると期待されています。

「普遍的価値」の最大化

世界遺産は、「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value: OUV)」を持つと認められたものが登録されます。この普遍的価値は、特定の国や地域に限定されない、人類全体にとって重要な価値を指します。

国境を越えることで初めてその真の価値が認められる遺産も少なくありません。例えば、複数の国にまたがる広大な熱帯雨林や、古代文明の広範な遺跡などは、国境を越えた視点で評価・保護されることで、その**「普遍的価値」が最大限に引き出される**と考えられています。

このように、トランス・バウンダリー・サイトの概念は、単なる遺産登録の形式ではなく、地球規模での環境保全、文化的多様性の尊重、そして国際社会の協調という、より大きなビジョンに根ざしているため、今日ますます注目されているのです。

トランス・バウンダリー・サイトの注意点

トランス・バウンダリー・サイトの例となる世界遺産は、下記が挙げられます。

・ヴィクトリアの滝(ザンビア・ジンバブエ)
・ベルギーとフランスの鐘楼群(ベルギー・フランス)

こうしたケースがある一方で、国境を越える世界遺産であっても別々の遺産として登録されているケースも存在します。例えば、イグアス国立公園はアルゼンチンとブラジルの両方に接していますが、別々に登録されています。

また、サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路についてもスペインとフランスでは別々に登録されており、このケースではトランス・バウンダリー・サイトとはみなされません。

トランス・バウンダリー・サイト(文化遺産)の一覧

トランス・バウンダリー・サイトに登録された、文化遺産の一覧は以下のとおり。

No.名称登録国登録年特徴登録基準
1ローマの歴史地区イタリア、ヴァティカン市国1980年 (1990年拡張)古代ローマから続く、歴史と芸術の宝庫たる永遠の都。(1),(2),(3),(4),(6)
2グアラニ人のイエズス会ミッションアルゼンチン・ブラジル1983年 (1984年拡張)先住民と宣教師が築いた理想郷、赤い砂岩の伝道所群。(4)
3コア渓谷とシエガ・ヴェルデの先史時代の岩壁画ポルトガル、スペイン1998年 (2010年拡張)氷河期の人類が描いた、ポルトガルとスペインの野外岩壁画。(1),(3) 
4ベルギーとフランスの鐘楼群ベルギー、フランス1999年(2005年拡張)市民の自由と自治の象徴、多様な様式を持つ55基の鐘楼群。(2),(4)
5クルシュー砂州リトアニア、ロシア2000年バルト海に伸びる、リトアニアとロシアの壮大な砂丘地帯。(5),(6)
6フェルテー(ノイジードル)湖の文化的景観オーストリア、ハンガリー2001年オーストリアとハンガリーにまたがる、8千年続く文化的湖沼景観。(5),(6)
7ムスカウ公園/ムジャクフ公園ドイツ、ポーランド2004年独ポーランド国境をまたぐ、19世紀景観公園の傑作。(1),(4) 
8シュトルーヴェの測地弧ベラルーシ、エストニア、フィンランド、ラトビア、リトアニア、ノルウェー、モルドバ、ロシア、スウェーデン、ウクライナ2005年10カ国をまたぐ、地球測定のための測量点群。(2), (3),(4),(6)
9セネガンビアのストーン・サークル遺跡群ガンビア、セネガル2006年西アフリカに広がる、謎多き古代ストーン・サークル群。(1),(3),(6)
10アルブラとベルニナの景観とレーティッシュ鉄道イタリア、スイス2008年スイスアルプスの絶景を走る、革新的技術の鉄道遺産。(2),(4)
11アルプス山脈周辺の先史時代の堀立柱住居群オーストリア、フランス、ドイツ、イタリア、スイス2011年アルプス周辺の湖沼に残る、先史時代の高床式住居跡群。(4),(5)
12水銀関連遺産:アルマデンとイドリアスロベニア、スペイン2012年スペインとスロベニアの世界最古級水銀鉱山遺跡群。(2),(4) 
13ポーランド、ウクライナのカルパチア地方の木造教会ポーランド、ウクライナ2013年カルパチア山脈に点在する、東方教会伝統の木造聖堂群。(3),(4)
14カパック・ニャン アンデスの道アルゼンチン、ボリビア、チリ、コロンビア、エクアドル、ペルー2014年インカ帝国が築いた壮大なアンデス山脈の道網。(2), (3),(4),(6)
15シルクロード:長安−天山回廊の交易路網中国、カザフスタン、キルギス2014年中国から中央アジアへ、東西文化交流を育んだ古代交易路。(2),(3),(5),(6) 
16モラヴィア教会の入植地群デンマーク、アメリカ、ドイツ、イギリス2015年(2024年拡張)18世紀モラヴィア教会の共同体、独特の社会構造と建築。(3),(4)
17ル・コルビュジエの建築作品 ‐ 近代建築運動への顕著な貢献アルゼンチン、ベルギー、フランス、ドイツ、インド、日本、スイス2016年近代建築の巨匠による、7カ国に点在する革新的な17作品。(1),(2),(6)
18中世墓碑ステチュツィの墓所群ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、モンテネグロ、セルビア2016年バルカン4カ国に点在する、中世の独特な石造墓碑群。(3),(4) 
1916 ‐ 17世紀ヴェネツィア共和国の軍事防衛施設群:スタート・ダ・テッラー西部スタート・ダ・マーレクロアチア、イタリア、モンテネグロ2017年ヴェネツィア共和国の領土を守るため築かれた要塞群。(3),(4)
20エルツ山地(クルスナホリ)鉱業地域チェコ、ドイツ2019年800年の歴史を持つ、独チェコ国境の鉱業景観。(2),(3),(4)
21慈善の集団居住地群オランダ、ベルギー2021年19世紀の貧困問題の解決に向けて作られた農業開拓地(2),(4)
22ヨーロッパの大温泉保養都市群イギリス、イタリア、オーストリア、チェコ、ドイツ、フランス、ベルギー2021年18〜20世紀、欧州の文化交流を育んだ温泉都市群。(2),(3)
23ローマ帝国の国境線 – ゲルマニア・インフェリオルのリーメスドイツ、オランダ2021年ローマ帝国北辺の防衛線、ライン川沿いの要塞群。(2),(3),(4)
24ローマ帝国の国境線-ドナウのリーメス(西部分)ドイツ、オーストリア、スロバキア2021年ドナウ川沿いに築かれた、ローマ帝国の巨大な国境線。(2),(3),(4)
25シルクロード:ザラフシャン・カラクム回廊タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン2023年ザラフシャン川とカラクム砂漠を結ぶ、中央アジアの交易路。(2),(3),(5)
26第一次世界大戦(西部戦線)の追悼と追憶の場ベルギー、フランス2023年ベルギー・フランスに広がる、第一次世界大戦の記憶と平和を願う地。(3),(4),(6)
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