トランス・バウンダリー・サイトとは?意味や日本の事例、全一覧を詳しく解説【2025年最新版】

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💡 1分でわかる結論:トランスバウンダリーサイトとは?

意味: 国境を越えて、複数の国にまたがって存在する「共通の価値」を持った世界遺産のこと(日本語では「国境を越える遺産」とも呼ばれます)。

特徴: 関わるすべての国が共同で推薦し、登録後も協力して保護・管理を行います。

日本の唯一の事例: 「ル・コルビュジエの建築作品:近代建築運動への顕著な貢献」(日本、フランス、スイス、ドイツ、ベルギー、アルゼンチン、インドの7カ国で共同登録)。

世界遺産の基礎知識【世界遺産検定】

kaz-travel海外旅行
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この記事を書いた人:kaz-travel

全世界を旅することを目的に、2026年1月現在で66ヵ国(通過しただけの国も含む)を旅するサラリーマントラベラーです。kaz-travelは、「忙しいサラリーマンでも、最大限に世界を旅する方法」を実体験(体験したい)に基づき発信するトラベルサイトです。2016年〜2020年には中国に駐在。

このサイトでは、世界一周航空券の具体的な活用術から、旅先でのトラブル対策、そして特に力を入れている「詳細な世界遺産訪問ガイド」まで、あなたの旅を豊かに、そして安全にするためのノウハウをお届けします。

目次

2026年のトランスバウンダリーサイトの動向

今回の委員会で審議される予定の「新規登録・拡張候補」の中に、トランスバウンダリーサイトに関連する重要な推薦が含まれています。

紅海のアカバ湾にある海洋保護区(自然遺産候補)について、隣国であるサウジアラビア側のサンゴ礁海域と連結させる形(トランスバウンダリーサイト化)での価値の証明や評価が、IUCN(国際自然保護連合)などの諮問機関を含めて審議・注目されています。

「アカバ海洋保護区(Aqaba Marine Reserve)」(ヨルダン)の拡張審議

トランス・バウンダリー・サイト(国境を越える遺産)とは

トランス・バウンダリー・サイトとは、「国境を越えて広がる世界遺産」のことです。

もともと世界遺産は国単位で登録されることが多いのですが、地球上の自然や文化の広がりは、人間が後から引いた「国境線」などお構いなしに続いています。この人為的な境界にとらわれず、本来の姿である「連続性」を尊重し、複数の国が協力して一つの遺産として守っていこうという考え方が、トランス・バウンダリー・サイトです。

なぜこの考え方が重要なのか?

  1. 自然や文化の「本来の姿」を守るため 山脈や川、生態系、あるいは古代の交易路や文化圏は、国境で分断されるものではありません。それぞれの国がバラバラに管理するのではなく、一体として管理することで、その遺産が持つ真の価値を最大限に守ることができます。
  2. 「普遍的価値」を最大化するため 世界遺産として認められるための「顕著な普遍的価値(OUV)」は、特定の国だけでなく、人類全体にとって重要な価値を指します。国境を越えて全体を評価することで、より広い視点からその価値を世界に伝えることができます。
  3. 国際協力と平和への架け橋 共同で調査や保全計画を行い、管理機関を設けるといった協力体制は、国家間の対話を生みます。「共通の宝物を守る」という目的を共有することで、政治や文化の壁を越えた信頼関係が育まれ、結果として国際平和にも貢献します。

運用と広がり

後からの拡大: すでに一つの国で登録されている遺産でも、隣接する国の関連遺産と結びつける「拡大登録」を行うことで、トランス・バウンダリー・サイトへと発展するケースもあります。

共同管理の推進: ユネスコの指針では、関係する国々が共同で登録推薦書を作成し、共同管理委員会などを設立して協力体制を築くことが推奨されています。

トランス・バウンダリー・サイトの注意点と実際

「国境を越える遺産」という概念は理想的ですが、現実にはすべての国境をまたぐ遺産がトランス・バウンダリー・サイトとして登録されているわけではありません。

成功している具体例

複数の国が連携し、一つの世界遺産として一体的に管理・登録されている代表例です。

  • ヴィクトリアの滝(ザンビア・ジンバブエ): 巨大な滝を共有する両国が協力し、一体の遺産として保護。
  • ベルギーとフランスの鐘楼群(ベルギー・フランス): 共通の歴史背景を持つ文化遺産を、国境を越えて一つのグループとして登録。

「別々」に登録されているケース(注意点)

地理的に連続していても、あるいはテーマが同じであっても、あえて別々の遺産として登録されているケースが数多くあります。

  • イグアス国立公園(アルゼンチン・ブラジル): 壮大な滝を両国で分け合っていますが、それぞれが別の遺産として登録されています。
  • サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路(スペイン・フランス): 大きな一つの巡礼ルートですが、スペインとフランスでそれぞれ個別の遺産として登録されています。

なぜ「別々」に登録されることがあるのか?

これにはいくつかの理由が考えられます。

登録時期や経緯: 片方の国が先に登録し、後からもう一方の国が登録を目指した際、管理の簡便さから「別々の登録」という形が選ばれることもあります。

管理体制の難しさ: 共同管理委員会を立ち上げ、保全ルールや予算配分を合意するには、高度な政治的調整と膨大な時間が必要です。

歴史的・政治的背景: 国によって保全の歴史や法律、優先順位が異なる場合、あえて別個に管理する方が効率的なこともあります。

世界遺産検定1級対策

世界遺産検定:過去の出題傾向と対策

世界遺産検定1級では、個別の遺産の詳細だけでなく、「世界遺産条約の概念・理念」に関する横断的な問題が全体の約10%(200点満点中20点分)出題されます。トランスバウンダリー・サイトやシリアル・ノミネーション・サイトはその筆頭です。

トランス・バウンダリー・サイトに関する傾向

  • 「世界遺産委員会で最初に登録され、のちに〜国に拡大された」という記述の正誤を問う問題
    実際に公式サイトの1級例題でも、「『ベルギーとフランスの鐘楼群』の説明として正しいものはどれか」という問いに対して、「はじめにベルギーの鐘楼群が登録され、のちにフランスに拡大された」が正解となる問題が出されています。
  • 国数の変遷や、最多保有国を問う問題
    『シュトルーヴェの測地弧』(10カ国)や『ブナ林』(18カ国)などは、「国境を越える遺産」のテーマとしてテキストでも太字やコラムで特集されていることが多く、それぞれの登録経緯(一発登録か、段階的な拡張か)は1級受験生が差をつけられるポイントです。

すべてを完璧に覚えるのは不可能なため、まずはテキストの「テーマ別解説」の章やコラムに載っているトランスバウンダリー・サイトに絞り、「これは最初から一緒だったか? 後から追加された国があるか?」を整理しておくのが最も効率的な対策になります。

シリアル・ノミネーション・サイト(連続性のある遺産)の傾向

1級では「基礎知識(条約の概念)」「個別の遺産」の両面から非常に狙われやすい重要テーマです。

出題される可能性が高い問題パターンを「基礎知識編」「日本の遺産編」に分けて整理しました。ここを押さえておくと、本番で確実に得点源にできます。

「基礎知識」から出題されるパターン

シリアル・ノミネーションの「定義」や「条件」についての正誤問題です。

判定基準(3つの要件)の穴埋め・正誤
世界遺産条約の作業指針において、シリアル・ノミネーションとして認められるには以下の3つのいずれかに該当する必要があります。この文言がそのまま選択肢に使われます。

1.同一の歴史・文化群に属するもの
2.地理区分を特徴づける同種の資産であるもの
3.同じ地質学的、地形学的、または同じ生物地理区分、同種の生態系に属するもの

【出題例のイメージ】
「シリアル・ノミネーション・サイトの判定基準として、正しくないものはどれか」

「構成資産の一部が削除・不登録になった場合」のルール

シリアル・ノミネーションは、「全体として一つの顕著な普遍的価値(OUV)」を証明する必要があります。

出題ポイント: 推薦した構成資産の中に「価値が認められない」と判断されたものが一部あっても、全体としてのOUVが揺らがなければ、残りの構成資産だけで登録されることがあります。

(例:『明治日本の産業革命遺産』の推薦時、一部の資産が除外されるよう勧告されましたが、全体として登録されました)

「日本の世界遺産」から出題されるパターン

日本の遺産は受験生の正答率が高くなるため、1級では一歩踏み込んだ引っかけ問題が出ます。

「日本初」のシリアル・ノミネーション・サイトはどれか?
正解:『古都京都の文化財』(17の構成資産)

引っかけの罠: 「複数の『自治体(都道府県)』をまたいだ初のシリアル・ノミネーションは?」と聞かれたら『紀伊山地の霊場と参詣道』(三重・奈良・和歌山)になります。この「日本初」の定義の違いは1級で大好物のパターンです。

日本のシリアル・ノミネーションの「構成資産の数」

特に近年登録された遺産は、構成資産の数が問われやすいです。

『北海道・北東北の縄文遺跡群』17の遺跡(+関連資産)
『百舌鳥・古市古墳群』45件49基
『奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島』5つの構成資産(4つの地域ですが、沖縄島北部が2つに分かれているため構成資産数は「5」)

「世界の遺産」から出題されるパターン

トランスバウンダリー(国境を越える)との複合問題

前述の『シュトルーヴェの測地弧』や『ル・コルビュジエの建築作品』のように、「シリアル・ノミネーションであり、かつトランスバウンダリー・サイトでもある遺産」は最頻出です。

・「国をまたいでいるものはすべてシリアル・ノミネーションである」→ (国が離れている時点で連続性遺産になります)
・「同一国内の複数の物件で構成されるものはトランスバウンダリーとは呼ばないが、シリアル・ノミネーションには該当する」→

🔥 1級受験生への一言アドバイス

問題を解くときは、常に「この遺産のOUV(顕著な普遍的価値)を証明するために、なぜこの複数の場所が必要だったのか?」を意識してみてください。

例えば、『明治日本の産業革命遺産』がなぜ23もの資産に分かれているかというと、「時系列(製鉄→造船→石炭)のストーリー」を繋ぐために必要だからです。この「ストーリー性(連続性)」を問う問題が出たら、シリアル・ノミネーションの核心を突いた良問です。

トランス・バウンダリー・サイト(文化遺産)の一覧

トランス・バウンダリー・サイトに登録された、文化遺産の一覧は以下のとおり。

No.名称登録国登録年特徴登録基準
1ローマの歴史地区イタリア、ヴァティカン市国1980年 (1990年拡張)古代ローマから続く、歴史と芸術の宝庫たる永遠の都。(1),(2),(3),(4),(6)
2グアラニ人のイエズス会ミッションアルゼンチン・ブラジル1983年 (1984年拡張)先住民と宣教師が築いた理想郷、赤い砂岩の伝道所群。(4)
3コア渓谷とシエガ・ヴェルデの先史時代の岩壁画ポルトガル、スペイン1998年 (2010年拡張)氷河期の人類が描いた、ポルトガルとスペインの野外岩壁画。(1),(3) 
4ベルギーとフランスの鐘楼群ベルギー、フランス1999年(2005年拡張)市民の自由と自治の象徴、多様な様式を持つ55基の鐘楼群。(2),(4)
5クルシュー砂州リトアニア、ロシア2000年バルト海に伸びる、リトアニアとロシアの壮大な砂丘地帯。(5),(6)
6フェルテー(ノイジードル)湖の文化的景観オーストリア、ハンガリー2001年オーストリアとハンガリーにまたがる、8千年続く文化的湖沼景観。(5),(6)
7ムスカウ公園/ムジャクフ公園ドイツ、ポーランド2004年独ポーランド国境をまたぐ、19世紀景観公園の傑作。(1),(4) 
8シュトルーヴェの測地弧ベラルーシ、エストニア、フィンランド、ラトビア、リトアニア、ノルウェー、モルドバ、ロシア、スウェーデン、ウクライナ2005年10カ国をまたぐ、地球測定のための測量点群。(2), (3),(4),(6)
9セネガンビアのストーン・サークル遺跡群ガンビア、セネガル2006年西アフリカに広がる、謎多き古代ストーン・サークル群。(1),(3),(6)
10アルブラとベルニナの景観とレーティッシュ鉄道イタリア、スイス2008年スイスアルプスの絶景を走る、革新的技術の鉄道遺産。(2),(4)
11アルプス山脈周辺の先史時代の堀立柱住居群オーストリア、フランス、ドイツ、イタリア、スイス2011年アルプス周辺の湖沼に残る、先史時代の高床式住居跡群。(4),(5)
12水銀関連遺産:アルマデンとイドリアスロベニア、スペイン2012年スペインとスロベニアの世界最古級水銀鉱山遺跡群。(2),(4) 
13ポーランド、ウクライナのカルパチア地方の木造教会ポーランド、ウクライナ2013年カルパチア山脈に点在する、東方教会伝統の木造聖堂群。(3),(4)
14カパック・ニャン アンデスの道アルゼンチン、ボリビア、チリ、コロンビア、エクアドル、ペルー2014年インカ帝国が築いた壮大なアンデス山脈の道網。(2), (3),(4),(6)
15シルクロード:長安−天山回廊の交易路網中国、カザフスタン、キルギス2014年中国から中央アジアへ、東西文化交流を育んだ古代交易路。(2),(3),(5),(6) 
16モラヴィア教会の入植地群デンマーク、アメリカ、ドイツ、イギリス2015年(2024年拡張)18世紀モラヴィア教会の共同体、独特の社会構造と建築。(3),(4)
17ル・コルビュジエの建築作品 ‐ 近代建築運動への顕著な貢献アルゼンチン、ベルギー、フランス、ドイツ、インド、日本、スイス2016年近代建築の巨匠による、7カ国に点在する革新的な17作品。(1),(2),(6)
18中世墓碑ステチュツィの墓所群ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、モンテネグロ、セルビア2016年バルカン4カ国に点在する、中世の独特な石造墓碑群。(3),(4) 
1916 ‐ 17世紀ヴェネツィア共和国の軍事防衛施設群:スタート・ダ・テッラー西部スタート・ダ・マーレクロアチア、イタリア、モンテネグロ2017年ヴェネツィア共和国の領土を守るため築かれた要塞群。(3),(4)
20エルツ山地(クルスナホリ)鉱業地域チェコ、ドイツ2019年800年の歴史を持つ、独チェコ国境の鉱業景観。(2),(3),(4)
21慈善の集団居住地群オランダ、ベルギー2021年19世紀の貧困問題の解決に向けて作られた農業開拓地(2),(4)
22ヨーロッパの大温泉保養都市群イギリス、イタリア、オーストリア、チェコ、ドイツ、フランス、ベルギー2021年18〜20世紀、欧州の文化交流を育んだ温泉都市群。(2),(3)
23ローマ帝国の国境線 – ゲルマニア・インフェリオルのリーメスドイツ、オランダ2021年ローマ帝国北辺の防衛線、ライン川沿いの要塞群。(2),(3),(4)
24ローマ帝国の国境線-ドナウのリーメス(西部分)ドイツ、オーストリア、スロバキア2021年ドナウ川沿いに築かれた、ローマ帝国の巨大な国境線。(2),(3),(4)
25シルクロード:ザラフシャン・カラクム回廊タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン2023年ザラフシャン川とカラクム砂漠を結ぶ、中央アジアの交易路。(2),(3),(5)
26第一次世界大戦(西部戦線)の追悼と追憶の場ベルギー、フランス2023年ベルギー・フランスに広がる、第一次世界大戦の記憶と平和を願う地。(3),(4),(6)
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