世界遺産の基礎知識3-ユネスコと世界遺産:多層的な組織と協力体制で守られる人類の宝【世界遺産検定】

知床 自然遺産

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世界遺産の保護と継承は、単一の組織の努力だけで実現できるものではありません。国連の専門機関であるユネスコを頂点に、複数の国際機関がそれぞれの専門性を活かし、緊密に連携することで、世界中の貴重な遺産が守られています。

ここでは、世界遺産制度を支える主要な組織とその役割、そしてそれらがどのように協力し合っているのかを解説します。

世界遺産の基礎知識についてまとめます。世界遺産という言葉は聞いたことあるけど、世界遺産とは何を目的にどのような基準で登録されるのか、確認していきましょう。世界遺産検定を受検する方は、試験全体の20~25%を占める重要なパートとなります。

目次

ユネスコ(UNESCO:国際連合教育科学文化機関)

世界遺産制度の「生みの親」であり、その全体を主管する最上位の機関がユネスコです。

概要

ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)は、国際連合(UN)に属する特殊機関の一つです。

1945年に設立され、フランスのパリに本部を置く国際連合の専門機関です。教育、科学、文化、通信、情報の分野における国際協力を促進し、世界の平和と安全に貢献することを使命としています。

  • 教育:世界中の教育の向上と普及を促進し、特に途上国や社会的に弱い立場にある人々への教育の機会を拡大します。
  • 科学:科学の進歩と国際的な協力を推進し、科学技術の発展が人類全体の利益に資するよう支援します。
  • 文化:文化の多様性の尊重と保護を促進し、文化遺産の保存やクリエイティブ産業の育成などに関与します。
  • 通信・情報:情報と通信技術の発展を奨励し、アクセス可能な情報社会の構築をサポートします。
  • 持続可能な開発:環境保護、持続可能な開発目標(SDGs)の推進、人権の尊重など、世界的な課題に対する協力を進めます。

ユネスコには、総会、執行委員会、事務局がある。
総会は通常2年に1度開催されます。執行委員会は58か国の政府代表からなり、2年に4回以上開催されます。松浦晃一朗氏は、日本人初のユネスコ事務局長として、第8代の2期(1999~2005、2005~2009)を務め、無形文化遺産条約の成立などに尽力した。

世界遺産における役割

  • 世界遺産条約の採択と推進: 1972年の世界遺産条約を採択し、その理念と枠組みを世界中に広めています。
  • 世界遺産センターの運営: 世界遺産に関する情報の集約、推薦プロセスの調整、委員会事務局の役割を担う「世界遺産センター」を運営しています。
  • 世界遺産基金の管理: 世界遺産の保護活動を支援するための基金を管理し、必要に応じて締約国への財政支援を行います。
  • 教育・啓発活動: 世界遺産の価値や保護の重要性を伝えるための教育プログラムや広報活動を展開しています。

世界遺産委員会

ユネスコの枠組みの中で、世界遺産制度における最も重要な意思決定機関が世界遺産委員会です。

概要

世界遺産条約締約国の中から、総会で選出された21カ国の委員国で構成されます。毎年1回開催される委員会会議で、重要な決定が下されます。

主な役割

  • 新規世界遺産の審査と登録: 諮問機関の評価報告に基づき、新たに世界遺産リストに登録する遺産を決定します。
  • 既存遺産の管理と監視: 登録された遺産の保存状況をモニタリングし、保護に関する助言や、必要に応じて「危機遺産リスト」への登録を決定します。
  • 世界遺産基金の運用方針決定: 世界遺産基金の使途や運用方針を決定し、保全プロジェクトへの支援を行います。
  • 世界遺産条約の戦略的推進: 「5つのC」のような戦略目標の策定など、世界遺産条約の履行と制度の発展に関する重要な議論と決定を行います。

世界遺産委員会の諮問機関:専門家による評価と助言

世界遺産委員会が適切な意思決定を行うために、ユネスコに代わって推薦遺産の専門的な評価や助言を行うのが以下の3つの諮問機関です。これらの機関は、それぞれの専門分野において、遺産の「顕著な普遍的価値」の有無や保護管理の状況を厳しく審査します。

ICCROM(イクロム:文化財の保存及び修復の研究のための国際センター)

  • 概要: 1959年に設立され、イタリアのローマに本部を置く国際的な政府間組織(IGO)です。文化財の保存と修復に関する研究、訓練、情報提供を専門としています。
  • 世界遺産における貢献: 世界遺産関係者の文化財保存修復能力の向上(Capacity-building)に特化しており、研修プログラムの実施や技術的な助言を通じて、世界遺産の効果的な保全を支援しています。

ICOMOS(イコモス:国際記念物遺跡会議)

  • 概要: 1965年に設立され、フランスのパリに本部を置く国際的な非政府組織(NGO)です。文化遺産の保護と管理に関する国際協力を促進し、専門的な助言を提供しています。
  • 世界遺産における貢献: 文化遺産の推薦物件に対する専門評価を担い、現地調査や文献調査を通じて、その遺産が世界遺産としての登録基準(特に真正性と完全性)を満たしているかを厳しく審査し、委員会に勧告します。

IUCN(アイユーシーエヌ:国際自然保護連合)

  • 概要: 1948年に設立され、スイスのグランに本部を置く非政府組織(NGO)です。国際的な自然保護と持続可能な利用の促進を目的とし、生物多様性や生態系に関する世界最大の知識ネットワークを有しています。
  • 世界遺産における貢献: 自然遺産の推薦物件に対する専門評価を行います。その遺産が生物多様性の保全、地質学的・地形学的特徴、生態学的・生物学的プロセス、あるいは類まれな自然美の観点から「顕著な普遍的価値」を持つかを審査し、委員会に勧告します。また、「レッドリスト」の作成など、絶滅危惧種の保全にも貢献しています。
  • バイオダイバーシティの保護:生態系の状態評価や絶滅危惧種のリストの作成など、バイオダイバーシティに関する科学的な作業を行い、生態系や種の保全に関する助言を提供しています。
  • 持続可能な利用と自然資源管理:自然資源の持続可能な利用、森林管理、水資源管理などに関する国際的なガイドラインやプロジェクトを推進しています。
  • 気候変動への対応:気候変動の影響に対処し、生態系への適応策を提案するための科学的な研究とプログラムを展開しています。
  • 国際的な政策への影響力:国際的な環境政策の形成に影響を与え、国際的な環境協定の交渉に参加しています。

まとめ

ユネスコを頂点とし、世界遺産委員会が意思決定を行い、そしてICOMOS、IUCN、ICCROMといった専門機関がそれぞれの知見と能力を結集して委員会を支える――この多層的かつ協力的な組織体制こそが、世界遺産制度の信頼性と実効性を保証しています。これらの機関の連携によって、世界中の多様な文化遺産と自然遺産が、次世代へと確実に引き継がれていくのです。

・世界遺産委員会諮問機関は、ユネスコの世界遺産委員会に対して助言や専門的な情報を提供する組織。ICCROM、ICOROM、IUCNがある。
・ICCROMは、1959年に設立され、本部はイタリアのローマ。
・ICCROMは、文化財の保存と修復の研究・訓練を促進。
・ICOMOSは、1965年に設立され、本部をフランのパリに置く国際的な非政府組織(NGO)。
・ICOMOSは、文化遺産の保存、修復、管理に焦点。

ユネスコは、1945年に設立され、本部はフランスのパリ
松浦晃一朗氏は、日本人初のユネスコ事務局長。

世界遺産に興味を持たれた方は、世界遺産検定に挑戦してみてはいかがでしょうか。
世界遺産検定公式HP

世界遺産に関するよくある質問

世界遺産について、皆さんが疑問に思うことの多い質問とその回答をまとめました。

世界遺産って具体的に何を指すの?

世界遺産とは、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が認定した、人類全体にとってかけがえのない価値を持つ文化財や自然地域のことです。地球上の多様な文化や自然の多様性を代表するもので、将来の世代に引き継いでいくべき宝物とされています。大きく分けて、人類の歴史や文化を示す「文化遺産」、地球の自然や生態系を示す「自然遺産」、そして両方の価値を兼ね備える「複合遺産」の3種類があります。

世界遺産に登録されると、何か特別なメリットがあるの?

世界遺産に登録されると、主に以下のようなメリットがあります。

  • 国際的な認知度向上: 世界中からの注目を集め、観光客が増加することで、地域経済の活性化につながります。
  • 保護・管理体制の強化: 国際的な基準に基づいた保護計画が策定され、必要に応じてユネスコの世界遺産基金からの支援も受けられます。これにより、より専門的かつ持続可能な形で遺産が守られます。
  • 地域住民の意識向上: 遺産が世界的に認められることで、地域の人々の遺産への誇りや、保全活動への意識が高まります。

日本にはいくつ世界遺産があるの?

2024年7月現在、日本には26件の世界遺産が登録されています。内訳は、21件の文化遺産と5件の自然遺産です。

世界遺産って一度登録されたら、ずっと安泰なの?

いいえ、そうではありません。世界遺産は登録後も、その「顕著な普遍的価値」を維持しているか、ユネスコによって継続的にモニタリングされます。自然災害、開発、紛争、オーバーツーリズム(観光客の過剰な集中)などによって遺産が脅威にさらされた場合、その遺産は「危機遺産リスト」に登録されることがあります。これは、国際的な支援を促し、遺産の保護を強化するための措置です。極めて稀ですが、価値が完全に失われたと判断された場合は、世界遺産リストから削除される可能性もあります。

世界遺産と、日本の国宝や国立公園ってどう違うの?

  • 世界遺産: ユネスコが国際的な基準に基づいて認定する「人類全体にとっての価値」を持つ遺産です。国際的な保護と協力の枠組みで守られます。
  • 国宝: 日本国内の文化財保護法に基づき、特に価値が高いと国が指定する建造物や美術工芸品です。国内法による保護が主です。
  • 国立公園: 自然公園法に基づき、優れた自然景観を持つ地域を国が指定・保護するものです。自然環境の保全と利用の調和を目指します。

これらは保護のレベルや管轄が異なりますが、例えば、日本の自然遺産である「屋久島」や「知床」は国立公園の一部であり、また文化遺産の中には国宝を含むものも多く、複数の保護制度が重なり合って適用されているケースも少なくありません。

世界遺産を訪問する際に、気を付けるべきことは?

世界遺産は貴重な人類共通の財産です。訪問する際には、以下の点に配慮しましょう。

  • ルールやマナーを守る: 各遺産にはそれぞれの保護のためのルールがあります。立ち入り禁止区域に入らない、指定されたルートを歩く、ゴミは持ち帰るなど、現地の指示に従いましょう。
  • 遺産に触れない・傷つけない: 建造物や自然物には直接触れたり、落書きをしたり、何かを持ち去ったりしないようにしましょう。
  • 写真撮影に配慮する: フラッシュの使用が禁止されている場所や、特定の場所での撮影が制限されている場合があります。他の訪問者や地元住民への配慮も忘れずに。
  • 地域文化を尊重する: 遺産が所在する地域の文化や伝統、人々の生活を尊重し、敬意を持って行動しましょう。
  • 持続可能な観光を心がける: 大量の観光客が集中することで遺産や地域社会に負荷がかかることがあります。混雑時を避ける、公共交通機関を利用する、地元経済に貢献するなどの配慮も大切です。
知床 自然遺産

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