世界遺産の基礎知識4-関係する概念【世界遺産検定】
世界遺産の基礎知識4-関係する概念【世界遺産検定を受検する方は必須】
世界遺産の基礎知識についてまとめます。世界遺産という言葉は聞いたことあるけど、世界遺産とは何を目的にどのような基準で登録されるのか、確認していきましょう。世界遺産検定を受検する方は、試験全体の20~25%を占める重要なパートとなります。
真正性
文化的景観
文化的景観は、人間社会が自然環境による制約の中で、社会的、経済的、文化的に影響を受けながら進化してきたことを示す遺産に認められる。1992年の第16回世界遺産委員会で採択された概念です。
文化的景観は大きく3つのカテゴリーに分類される。
1.意匠された景観
庭園や公園、宗教的空間など、人間によって意図的に設計された創造された景観。
2.有機的に進化する景観
社会や経済、政治、宗教などの要素によって生まれ、自然環境に対応して形成された景観。
3.関連する景観
自然の要素が民族に大きな影響を与え、宗教的、芸術的、文学的な要素と強く関連する景観。
1993年、ニュージーランドの「トンガリロ国立公園」において、世界ではじめて文化的景観の価値が認められた。
詳細は文化庁ホームページを確認ください。
グローバル・ストラテジー
世界遺産リストにおける不均衡の是正のため、1994年の第18回世界遺産委員会で採択された。
地域的、時代的、内容的な不均衡の是正を目標としている。
具体的には4点が挙げられる。
1.地理的拡大
世界遺産を持たない国や地域からの登録を強化し、地理的な不均衡をなくす。
2.産業関係、鉱山関係、鉄道関係の強化
産業関連遺産は文化財とみなされず、現在も稼働中で体系的な保護・保全が行われていないことが多かったが、積極的に保護するよう求めている。
3.先史時代の遺跡群の強化
先史時代の遺跡は遺産価値を示す科学的根拠や保全体制が不十分などの理由から登録数が少なかった。最初期の貴重な証拠として、登録強化を求めている。
4.20世紀以降の文化遺産
現代の建築物は、時代の検証を経ておらず、文化財を保護するための各国の法体制から外れていることが多い。現代の文化遺産でも顕著な普遍的価値が認められるものは、積極的に保護するよう求めている。
詳細は文化庁ホームページを参照ください。
シリアル・ノミネーション・サイト
文化や歴史的背景、自然環境などが共通する遺産を、全体として顕著な普遍的価値を有するものとして登録した遺産である。
必ずしも個々の遺産が顕著な普遍的価値を持っている必要はなく、全体として顕著な普遍的価値を持っていれば良い。
「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」のように1つの国内に全ての構成資産が含まれる場合もあれば、国境を越えてトランス・バウンダリーサイトとなる場合もある。以下にシリアル・ノミネーション・サイトの例を示します。
1.富士山(日本): 山梨県と静岡県にまたがり、文化的・歴史的背景を共有しています。
2.ミラノの大聖堂とヴィットーリオ・エマヌエーレ II 世のギャラリーとエマヌエーレ II 世のアーケード(イタリア): ミラノの中心部にある複数の建造物が含まれています。
詳細はこちらで確認ください。
トランス・バウンダリー・サイト
自然は本来、国家の概念とは関係なく存在するものである。トランス・バウンダリー・サイトはそうした人為的な国境線にとらわれない自然遺産の登録推薦の際に提案された。
文化遺産の場合でも、「ベルギーとフランスの鐘楼群」のように、かつて1つの民族であっても、国境で分断されてしまうことがあり、そうした遺産の保護にもこの概念が用いられる。
・1つの国ある遺産が、拡大登録によってトランス・バウンダリー・サイトになる場合もある。
・国境を接する遺産であっても、別々に登録されているイグアスの滝などは、トランス・バウンダリー・サイトとはみなされない。
人間と生物圏計画(MAB計画)
生物多様性を保全するための地域として、生物圏保存地域を定めている。
日本からは、「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産である大峰山を含む「大台ヶ原・大峰山・大杉谷」など10件が登録されている。
生物圏保存地域では「核心地域」と「バッファー・ゾーン」「移行地帯」の三段階に分けて重層的に保護している。「バッファー・ソーン」「移行地帯」は世界遺産登録の範囲に含まれない。
詳細は文部科学省のホームページを確認ください。
世界遺産条約履行のための戦略的目標「5つのC」
2002年にハンガリーのブタペストで世界遺産に関するブタペスト宣言が採択された。
・Credibility(信頼性)
世界遺産リストの信頼性を高める。
・Conservation(保存)
遺産を適切に保護・保全する。
・Caoacity-building(能力開発)
世界遺産にかかわる人を育成する。
・Communication(情報伝達)
世界遺産の価値や理念を広める。
・Community(共同体)
世界遺産の程に欠かせない。
詳細はこちらで確認ください。
まとめ
・真正性は文化遺産に用いられる概念。
・完全性は全ての世界遺産に求められる概念で、世界遺産の顕著普遍的価値を構成するために必要な要素がすべて含まれ、また長期的な保護のための法律などの体制も整えられていること
・文化的景観は、人間社会が自然環境による制約の中で、社会的、経済的、文化的に影響を受けながら進化してきたことを示す遺産に認められる。
・グローバル・ストラテジ―は、世界遺産の不均衡の是正のため、1994年の第18回世界遺産委員会で採択された。
・シリアル・ノミネーション・サイトは文化や歴史的背景、自然環境などが共通する遺産を、全体として顕著な普遍的価値を有するものとして登録した遺産である。
・トランス・バウンダリー・サイトはそうした人為的な国境線にとらわれない概念。
・MAB計画では、生物圏保存地域を「核心地域」と「バッファー・ゾーン」「移行地帯」の三段階に分けて重層的に保護している。
・5つのCは、2002年にハンガリーのブタペストで世界遺産に関するブタペスト宣言が採択された。
世界遺産に興味を持たれた方は、世界遺産検定に挑戦してみてはいかがでしょうか。
世界遺産検定公式HP