世界遺産検定1級を目指す学習者に向けて、複数の世界遺産にまたがる「伝統集落」を整理した大辞典エントリーです。個々の遺産の解説ではなく、集落や村の景観・暮らしが評価された世界遺産を、型ごとに横断して一覧できる索引として使えます(辞典内は東アジアの遺産です。世界の代表例は下の別見出しにまとめています)。
基礎データ
| 見出し語 | 伝統集落(集落景観) |
|---|---|
| 定義 | 人びとの暮らしの場として、家々と土地の使い方、生業、社会の仕組みを伝える集落(一般的な説明)。建物1つではなく、集落全体の保存が問われます。 |
| 世界遺産での現れ方 | 防御型(福建土楼・開平)/農村・氏族型(白川郷・西逓と宏村・河回と良洞)/商業都市型(麗江・平遥) |
| 関連する世界遺産 | 辞典内は7件(日本1・中国5・韓国1)。ほかに対比として、棚田の景観と潜伏キリシタンの集落の2件。型ごとに整理しています。 |
混同しやすい点:土楼と碉楼・氏族村と商業都市
防御型の2つは、住む人と成り立ちで区別します。福建土楼は一族が共同で暮らす土の集合住宅、開平の碉楼は、海外へ渡った開平出身者の影響で中国と西洋の様式が融合した、多層の塔です。
農村・氏族型は、白川郷が養蚕を支えた合掌造りの大家族の集落、西逓・宏村が官吏や商人が故郷に戻って築いた安徽の村、河回・良洞が朝鮮王朝前期の貴族(両班)の氏族村です。商業都市型では、麗江が明代に商業の中心として成立した納西族の町、平遥が城壁で囲まれた14世紀創建の都市です。木造の観点は木造建築(東アジアの世界遺産)のエントリーも参照してください。
関連する世界遺産の一覧
防御型
- 福建土楼(2008年):15〜20世紀に造られた46棟(UNESCOの英語の要約)。防御のための大きな土の建物で、中庭を囲む円形または方形、入口は1つ、外に向く窓は1階より上にあります。
- 開平の望楼群と村落(2007年):盗賊に備えた、防御のための多層の村の家(碉楼)。避難用の共同の塔、裕福な家の住居用の塔、見張りの塔の3つの形があります。19世紀末〜20世紀初めに海外へ渡った開平の人々の役割も評価されています。
農村・氏族型
- 白川郷・五箇山の合掌造り集落(1995年):山間の孤立した地域で、桑の栽培と養蚕で生計を立てた村。荻町・相倉・菅沼の3つの集落が、環境に完全に適応した伝統的な暮らしの例です。
- 安徽南部の古村落-西逓と宏村(2000年):商業を主な収入源とし、家族・氏族に基づく社会組織をもつ2つの村。成功した官吏や商人が故郷に戻って築き、水の仕組みと家が一体になった配置が特徴です。
- 韓国の歴史村:河回と良洞(2010年):14〜15世紀に始まる、氏族の村の代表。山に守られ、川と農地に面する立地が、朝鮮王朝前期の貴族的な儒教文化を表します。氏族長の邸宅、書院、茅葺きの家などがあります。
商業都市型
- 麗江旧市街(1997年):雲南省の標高2,400mの平原にあり、大研古城・白沙・束河の3つの構成資産からなります。大研古城は明代に商業の中心として成立し、納西族の文化を表す木造の家屋が並びます。
- 平遥古城(1997年):14世紀に創建された都市で、古い城壁・街路・店舗・住居・寺院が一体となって残ります。城壁で囲まれた漢族の都市の例です。
対比で押さえる:棚田の景観・信仰を守った集落
- 紅河ハニ棚田群の文化的景観(2013年):雲南省南部の約1万6,600haに広がる棚田。ハニ族が1,300年にわたり、森の山頂から棚田へ水を引く水路の仕組みを築いてきました。
- 長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産(2018年):10の集落と原城跡、大聖堂からなる遺産。17〜19世紀の禁教期に、信仰をひそかに受け継いだ文化の伝統を伝えます。
辞典には未収録の世界の代表例
大辞典は東アジアの遺産を中心に載せています。検定でよく問われる集落の代表例を、リンクなしで挙げます(登録年はUNESCO)。
- ホロークーの古村とその周辺(ハンガリー、1987年):伝統的な村の景観
- アイット・ベン・ハドゥのクサール(モロッコ、1987年):防御を備えた集落(クサール)
- タオス・プエブロ(アメリカ、1992年):先住民の集落(プエブロ)
- アルベロベッロのトゥルッリ(イタリア、1996年):トゥルッリと呼ばれる家々の町
- トランシルヴァニアの要塞教会のある村落(ルーマニア、1993年):要塞化した教会をもつ村落
よくある質問

福建土楼では、どのように暮らしていたのですか?
UNESCOによれば、建物は縦に区切って各家族が使い、1家族が各階に2〜3部屋ずつをもつ構造でした。一族が共同で暮らす集合住宅だったことが、防御の組織と結びついています。
麗江旧市街は、どんな構成資産でできていますか?
大研古城(黒龍潭を含む)・白沙・束河の3つです。白沙は大研古城より早い宋・元代に成立した集落で、大研古城の北約8kmにあります。


