世界遺産検定1級を目指す学習者に向けて、複数の世界遺産にまたがる「木造建築」を整理した大辞典エントリーです。個々の遺産の解説ではなく、木造の建物が評価された世界遺産を横断して一覧できる索引として使えます(辞典内は東アジアの遺産です。世界の代表例は下の別見出しにまとめています)。
基礎データ
| 見出し語 | 木造建築(東アジアの世界遺産) |
|---|---|
| 定義 | 柱や梁などの構造に木材を用いた建築(一般的な説明)。 |
| 世界遺産での現れ方 | 寺院(法隆寺・京都・奈良)/神社(厳島・日光)/住居・集落(白川郷・麗江)/宮殿(昌徳宮)/祭祀施設(宗廟)/山の寺院群(紀伊山地・山寺) |
| 関連する世界遺産 | 辞典内は16件(日本7・中国5・韓国4)。UNESCOが「木造」と述べる遺産を先に、木造建築が中心として検定で問われやすい遺産(UNESCOは木造と述べていません=一般的な説明)を別枠にしています。 |
混同しやすい点:世界最古級の木造建築と保存の方法
世界最古級の木造建築群は法隆寺です。UNESCOは、7世紀後半〜8世紀の建物が、世界で現存する最古級の木造建築だと述べています。中国では五台山の仏光寺東大殿が、UNESCOの述べる唐代の木造建築として現存する最高位の建物です。平遥古城の鎮国寺・万仏殿は、それより後の五代の、中国で最も早い時期の木造建築のひとつとされます。
保存の方法にも共通点があります。木造は火災に弱く、解体・再建を伴う修理や部材の更新で受け継がれます。法隆寺は1934年以降、解体修理の技術が発達し、宗廟も解体・再建を伴う修復を重ねてきました。紀伊山地では、木造建築を再建・更新する長い伝統があるため真正性が保たれていると評価されています。一方、宗廟や昌徳宮は火災が最大の危険で、昌徳宮の木造建築は歴史の中で何度も焼失しました。
建物の見方は伝統集落(集落景観)、山の信仰は霊山(山岳信仰)のエントリーも参照してください。
関連する世界遺産の一覧
日本(UNESCOが木造に触れる遺産)
- 法隆寺地域の仏教建造物(1993年):法隆寺と法起寺の48棟の古い木造建造物。うち11棟は7世紀後半〜8世紀で、世界で現存する最古級の木造建築です。構造は中国の「間(ベイ)」の体系に基づく、柱と梁に複雑な組物を組み合わせたものです。
- 古都京都の文化財(1994年):UNESCOは、京都が日本の木造建築、特に宗教建築の発展を示すと述べています。
- 白川郷・五箇山の合掌造り集落(1995年):急勾配の茅葺き屋根をもつ大きな合掌造りの家は、日本で唯一の例です。伝統的な木造建築は規格化された部材の組み立てなので、再建・取り替えの際の推測が最小限で済みます。
- 厳島神社(1996年):17棟の建物と3つの構造物が2つの社殿群をなし、海の上に建ちます。UNESCOは、社殿がすべて木造のため、自動火災報知機や避雷装置を備えると述べています。
- 紀伊山地の霊場と参詣道(2004年):木造建築を再建・更新する長い伝統があるため、それぞれの木造建築の真正性が保たれています。
日本(木造建築が中心で、検定で問われやすい遺産。UNESCOの要約は木造と述べていません=一般的な説明)
- 古都奈良の文化財(1998年):8つの構成資産に78の建物。UNESCOは、中国・韓国との交流を背景とした日本建築と美術の発展を示すと述べています。
- 日光の社寺(1999年):2つの神社と1つの寺に103の宗教建築があり、多くは17世紀に建てられました。山の斜面に配置されています。
中国
- 麗江旧市街(1997年):2階建て・瓦屋根の木造の家屋が、山の等高線に沿って並びます。漢族とチベット族の建築の要素を組み合わせた納西族の文化を表し、木の部材には精巧な彫刻があります。
- 平遥古城(1997年):鎮国寺の万仏殿は、中国で最も早く、最も貴重な木造建築のひとつ(五代)とされます。
- 五台山(2009年):41の寺院があり、仏光寺東大殿は、唐代の木造建築として現存する最高位の建物で、等身大の塑像があります。
- 武当山の古建築群(1994年):(木造との記述はUNESCOの要約にありません=一般的な説明)元・明・清の宮殿と寺院の建築。14〜17世紀の明代に整えられた、道教の大規模な建築群です。
- 北京と瀋陽の明・清王朝皇宮(1987年):(木造との記述はUNESCOの要約にありません=一般的な説明)北京の故宮は1416〜1911年の最高権力の座で、約1万の部屋をもつ多数の建物があります。瀋陽には114の建物があります。
韓国
- 宗廟(1995年):UNESCOは、東アジアの木造建築の伝統に属する建物で、解体・再建を伴う修復を重ねてきたと述べています。火災が最大の危険です。
- 韓国の歴史村:河回と良洞(2010年):氏族長の邸宅のほか、一族の立派な木造家屋、亭、書院があり、庶民の茅葺きの家も残ります(集落としての説明は伝統集落のエントリー)。
- 昌徳宮(1997年):建物は木造で石の基壇の上に建ち、多くが瓦の寄棟屋根と、多数の組物・装飾の彫刻をもちます。木造建築は何度も火災で焼失しました。
- 山寺、韓国の山地僧院群(2018年):(木造との記述はUNESCOの要約にありません=一般的な説明)7つの寺は、マダン(中庭)を、仏殿・楼閣・講堂・寮の4つの建物が囲む配置を共通にもちます。伝統的な工法で維持されています。
辞典には未収録の世界の代表例
大辞典は東アジアの遺産を中心に載せています。検定でよく問われる木造建築の代表例を、リンクなしで挙げます(登録年はUNESCO)。
- キジ島の木造教会(ロシア、1990年):木造の教会建築で知られる遺産
- ウルネスの木造教会(ノルウェー、1979年):スターヴ教会(木造教会)
- マラムレシュの木造教会群(ルーマニア、1999年):木造の教会建築群
- チロエの教会群(チリ、2000年):木造の教会建築群
- カルパティア地方の木造教会群(ポーランド・ウクライナ、2013年):16の木造教会(ツェルクヴァ)。16〜19世紀に丸太を水平に積んで建てられました
よくある質問

海印寺の木版は、世界遺産に登録されているのですか?
世界遺産として登録されたのは、木版を納める建物(海印寺大蔵経板殿)です。15世紀に建てられた建物で、約8万枚の経典の木版を保存する工夫が評価されました。木版そのものは、世界遺産とは別の制度(世界の記憶)の対象です。
厳島神社の社殿は、なぜ海の上に建っているのですか?
UNESCOは、厳島が古くから神道の聖地とされてきた島だと述べています。山や自然物を信仰の対象とし、人工の建築を中央に、前面に海、背後に山を配した三位一体の構図が、日本の美の基準として認められています。


