世界遺産検定1級を目指す学習者に向けて、複数の世界遺産にまたがる「水利と棚田」を整理した大辞典エントリーです。個々の遺産の解説ではなく、水を引き・運び・分ける仕組みや、水と結びついた農耕の景観が評価された世界遺産を横断して一覧できる索引として使えます(辞典内は中国とカンボジアの遺産です。世界の代表例は下の別見出しにまとめています)。
基礎データ
| 見出し語 | 水利と棚田(水の利用と農耕の景観) |
|---|---|
| 定義 | 水を引き、ためて、運び、分ける仕組み(灌漑・運河・水路)と、傾斜地を段状に造った農地(棚田)(一般的な説明)。 |
| 世界遺産での現れ方 | 灌漑(都江堰)/運河(大運河)/棚田と水路(紅河ハニ棚田)/村や町の水系(西逓と宏村・麗江)/都の水利施設(上都)/巨大な貯水池(アンコール) |
| 関連する世界遺産 | 辞典内は7件(中国6・カンボジア1)。下の一覧のリンクから、各遺産の大辞典エントリーへ移動できます。 |
混同しやすい点:都江堰・大運河・紅河ハニ棚田
目的で区別します。都江堰は、灌漑の施設で、岷江(びんこう)の水を調節して成都平原の農地へ分配します。大運河は、輸送のための水路網で、穀物や戦略物資を運び、米を人びとへ供給しました。紅河ハニ棚田は、農耕の景観で、山頂の森から引いた水で棚田を潤す、ハニ族の暮らしと一体になった仕組みです。アンコールは、クメール王朝の大きな貯水池(バライ)と運河などの水利施設をもつ遺跡です。麗江は、UNESCOが町の水道網そのものを評価しています。「水利」と「景観」の線引きは編集上の整理(一般的な整理)なので、目的(灌漑・輸送・暮らし)で覚えるのがおすすめです。運河と交易の関わりはシルクロード(東西交易路)のエントリーも参照してください。
関連する世界遺産の一覧
中国
- 青城山と都江堰の灌漑施設(2000年):都江堰の灌漑施設は紀元前3世紀に建設が始まり、現在も機能しています。UNESCOは、水の管理と技術の発展における大きな到達点と述べています。
- 大運河(2014年):北京から浙江省まで続く水路網。紀元前5世紀から区間ごとに築かれ、7世紀(隋)に帝国の統一した交通手段として構想されました。UNESCOは、産業革命以前の世界最大の土木工事と述べています。
- 紅河ハニ棚田群の文化的景観(2013年):雲南省南部の約1万6,600haに広がる棚田。ハニ族が1,300年にわたり、森の山頂から棚田へ水を引く水路の仕組みを築いてきました。
- 安徽南部の古村落-西逓と宏村(2000年):街路の配置、建築と装飾、そして家々と総合的な水の仕組みが一体になった配置が、ほかに類のない現存例とされます。
- 麗江旧市街(1997年):北西の玉龍雪山を水源とする黒龍潭から、水路網が町に水を供給します。UNESCOは、複雑で巧妙な古い水道網が現在も機能していると述べています。
- 上都遺跡(2012年):クビライ・カンの都の遺跡に、ティエファンガン運河(Tiefan’gang Canal)と、ほかの水利施設が含まれます。
カンボジア
- アンコール(1992年):UNESCOは、約400平方kmに寺院群と、水利施設(貯水池・堤・運河)、交通路があると述べています。バライと呼ばれる大きな貯水池と運河の多くが、今も残っています。
辞典には未収録の世界の代表例
大辞典は東アジアの遺産を中心に載せています。検定でよく問われる棚田・水利の代表例を、リンクなしで挙げます(登録年はUNESCO)。
- フィリピン・コルディリェーラの棚田群(フィリピン、1995年)(総合ガイド記事あり):棚田の景観
- バリ州の文化的景観:トリ・ヒタ・カラナ哲学を表現したスバック・システム(インドネシア、2012年)(総合ガイド記事あり):水利組織スバックに基づく景観
- オマーンのアフラージュ灌漑システム(オマーン、2006年):灌漑システム
- シューシュタルの歴史的水利施設(イラン、2009年):水利施設
- ポン・デュ・ガール(ローマ水道橋)(フランス、1985年):ローマ時代の水道橋
- 良渚古城遺跡(中国、2019年):稲作を基盤とする統一された信仰体系をもつ、新石器時代後期の初期の地域国家の遺跡。UNESCOは、治水・水利システム(water conservation system)をもつと述べています(辞典には未収録)
よくある質問

紅河ハニ棚田は、どのような農業を行っているのですか?
UNESCOによれば、水牛・牛・アヒル・魚・ウナギを組み合わせた統合的な農業の仕組みで、地域の主要な作物である赤米の生産を支えています。
棚田の世界遺産は、ハニ以外にどこがありますか?
辞典内の棚田は紅河ハニ棚田です。辞典に未収録の代表例には、フィリピン・コルディリェーラの棚田群(1995年)と、バリ州の文化的景観(スバック・システム、2012年)があります。バリは棚田そのものより、水利組織スバックに基づく景観として押さえます。


