地球上に点在するかけがえのない文化遺産と自然遺産。これらを個々の国のものとしてだけでなく、「人類全体の共通の遺産」として守り、未来の世代に引き継いでいこう――この壮大な理念を具体化したのが、1972年にユネスコで採択された「世界遺産条約(正式名称:世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約)」です。
この条約は、文化遺産と自然遺産を一体的に保護する世界で初めての国際法文書であり、その成立は、エジプトのヌビア遺跡群がダム建設で水没の危機に瀕した際に国際的な救済キャンペーンが成功した経験なども背景に、国際社会が遺産保護への意識を高めた結果でもありました。
本記事では、世界遺産条約がどのような目的を持ち、その運用を支える主要な組織や仕組みについて詳しく解説します。
世界遺産の基礎知識についてまとめます。世界遺産という言葉は聞いたことあるけど、世界遺産とは何を目的にどのような基準で登録されるのか、確認していきましょう。世界遺産検定を受検する方は、試験全体の20~25%を占める重要なパートとなります。
世界遺産条約の目的と歴史的意義
世界遺産条約の最も根本的な目的は、「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value: OUV)」を持つ文化遺産と自然遺産を特定し、その保護・保全のために国際的な協力を促進することにあります。
この条約が画期的だったのは、以下の点です。
- 文化と自然の融合: 従来、別々に議論されることが多かった文化遺産と自然遺産を、「人類共通の遺産」として一体的に保護するという、当時としては革新的なアプローチを打ち出しました。
- 国家主権を超えた国際的責任: 各国の領域内に存在する遺産であっても、その価値が普遍的であるならば、それは人類全体の責任で守るべきだという国際的な認識を確立しました。
条約は1972年に採択された後、1975年に発効。翌1976年には初の世界遺産委員会が開催され、世界遺産基金も設立されました。以来、世界遺産条約は国際的な遺産保護の最も強力な法的枠組みとして機能し続けています。
・1972年 – 条約の採択:1972年11月16日、ユネスコ総会で「文化的および自然的遺産の保護に関する世界遺産条約」が採択されました。この日は世界遺産条約の発効日とされています。
・1975年 – 発効:世界遺産条約は1975年12月17日に発効しました。これにより、各国は条約に署名して批准することで、世界遺産の保護に参加することができるようになりました。
・初の世界遺産委員会会議:1977年にフランスのパリで初めて世界遺産委員会の会議が開催されました。この会議で初めての世界遺産リストが採択されました。
・世界遺産基金の設立:1972年に世界遺産基金が設立されました。この基金は、新たな世界遺産の候補地への資金提供や危機に瀕した遺産への支援に使用されます。
・1992年 – 複合遺産の認識:世界遺産委員会は、文化的および自然的な要素が複合的に組み合わさった複合遺産の認識を始めました。これにより、文化と自然の相互の関係がより総合的に評価されるようになりました。
・2003年 – 無形文化遺産の認識:2003年には、「無形文化遺産の保存に関する条約」が採択され、無形文化遺産の保護と促進が始まりました。これにより、物質的な遺産に加えて非物質的な文化も注目されるようになりました。
・現在:世界遺産委員会は、毎年開催される会議で新たな世界遺産の登録や管理に関する決定を行っています。また、各国は遺産の保護と管理に関する報告を提出し、協力して持続可能な開発と文化的多様性を実現するための努力を続けています。
世界遺産条約の運用を支える主な組織と仕組み
世界遺産条約の精神は、主にユネスコの傘下にある「世界遺産委員会」によって具体的に運用されています。
世界遺産委員会:意思決定の中枢
世界遺産条約締約国の中から選出された21カ国の委員国で構成され、毎年一度、世界各地で会議を開催します。世界遺産制度における最高意思決定機関です。
世界遺産委員会の主な役割
- 新規遺産の審査と登録: 推薦された遺産が「顕著な普遍的価値」を有し、保護管理体制が整っているかを審査し、世界遺産リストへの登録を決定します。
- 既存遺産の管理と監視: 登録された遺産の保存状況を継続的にモニタリングし、必要に応じて締約国に助言や支援を行います。
- 危機遺産への対応: 紛争、自然災害、無計画な開発などによって深刻な脅威に直面している遺産を「危機遺産リスト」に登録し、国際社会からの緊急支援を促します。
- 世界遺産基金の管理: 遺産保護のための資金(世界遺産基金)の運用方針を決定し、保全プロジェクトへの財政支援を行います。
- 条約の戦略的推進: 世界遺産制度の長期的な方向性や課題解決に向けた戦略(例:ブダペスト宣言の「5つのC」)を策定・承認します。
世界遺産委員会事務局(世界遺産センター)
フランスのパリにあるユネスコ本部に設置されており、世界遺産委員会の活動を実務面から支える事務局です。
- 遺産情報の管理、新規推薦案件の予備審査、既存遺産の保全・管理支援、危機遺産への対応調整、世界遺産基金の管理実務、委員会との連絡調整、国際協力の推進など、多岐にわたる業務を担っています。
世界遺産基金:保護活動を支える財源
世界遺産の保全と管理に関するプロジェクトを支援するために設立された国際基金です。締約国の拠出金や寄付などで成り立っています。
- 主な使途:
- 緊急援助: 地震や紛争などによって遺産が深刻な被害を受けた際の緊急修復や調査活動。
- 準備援助: 世界遺産推薦書の作成や、遺産管理計画の策定に必要な専門家派遣などの支援。
- 保全・管理援助: 登録された遺産の長期的な保全活動や、能力開発プログラムへの支援。
- 具体例: 東日本大震災で被災した「平泉」の修復活動や、アフリカの国立公園での密猟対策など、世界各地の多様な遺産保護プロジェクトに活用されています。
世界遺産条約の「作業指針」:運用のための詳細ルール
世界遺産条約の実効性を担保するためには、具体的な運用ルールが必要です。それが「世界遺産条約履行のための作業指針(Operational Guidelines for the Implementation of the World Heritage Convention)」です。
この指針には、主に以下の内容が詳細に定められています。
- 登録基準: 遺産が「顕著な普遍的価値」を持つことを証明するための10の具体的な基準(文化遺産6項目、自然遺産4項目)。
- 登録手続き: 締約国が遺産を推薦する際の具体的なプロセス、必要書類、評価方法など。
- 保全基準: 登録された遺産の「真正性」と「完全性」をどのように維持していくかに関する基準。
- 危機遺産の管理: 危機遺産に指定される基準、リストからの脱却プロセス、国際支援のあり方。
- 登録後の査定と検証: 定期報告やリアクティブ・モニタリングといった、登録後の監視体制。
- 国内法の整備: 各締約国が、世界遺産を保護するために国内で整備すべき法的・制度的枠組み。
この作業指針は、世界遺産制度が透明性高く、公平に運用されるための基盤であり、世界遺産に関わるすべての関係者にとって不可欠な手引きとなっています。
世界遺産条約締約国会議
世界遺産条約締約国会議は、ユネスコに加盟している国々の代表者が集まり、世界遺産に関する重要な事項や方針について協議するための会議です。この会議は通常、年次のユネスコ世界遺産委員会会議の形態をとります。
第1回世界遺産締約国会議は、1976年11月のナイロビでのユネスコ総会会期中に開催された。
会議では世界遺産基金への分担金の決定や世界遺産委員会委員国の選定のほかに、世界遺産委員会から世界遺産条約締約国会議とユネスコ総会に対して提出された活動報告書を受理する。
世界遺産条約締約国会議は、ユネスコ加盟国(195か国)のうち、ナウルを除く194か国とバチカン市国が締約している。加盟国の中にはパレスチナ自治政府のように、日本政府が国家承認していない国も含まれる。
世界遺産委員会
世界遺産委員会は、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の下部組織であり、世界遺産に関する政策の決定や管理に関わる主要な機関です。
ユネスコ世界遺産委員会のメンバーは、任期6年の国別代表からなります。自発的に4年に短縮することも可能である。委員は文化遺産と自然遺産のバランスを取りながら、遺産の多様性を反映するように選ばれます。
委員国
世界遺産条約締約国総会で選出された21か国の委員国で構成されます。
委員国の選出は地域ごとに枠があり、それぞれ以下の基準で選ばれる。
- 「西欧・北米(グループI)」から2カ国
- 「東欧(グループⅡ)」から2ヵ国
- 「ラテンアメリカ・カリブ海 (グループⅢ)」から2ヵ国
- 「アジア・太平洋(グループIV)」から3ヵ国
- 「アフリカ (グループVa)」から4ヵ国
- 「アラブ(グループVb)」から2ヵ国
ビューロー会議
世界遺産委員会は、議長国1ヵ国、副議長国5ヵ国、書記国1ヵ国の7ヵ国で構成される任期1年のビューロー(事務局)会議を設置します。こちらのピューロー会議は内閣のような存在で、世界遺産委員会の進行や日程の決定を行って、世界遺産委員会の最終日に、次回の世界遺産委員会のビューロー会議構成国を決定するのです。
役割と機能
委員会は以下の主な役割と機能を果たしています。
世界遺産リストへ登録推薦された遺産に対し、「登録」「情報照会」「登録延期」「不登録」の4段階で決議を行う。
・新たな世界遺産の審査と登録:委員会は、新たな文化的および自然的な遺産の提案を審査し、それが世界遺産の基準に適合するかどうかを評価します。審査を通過した遺産は登録され、国際的な認知を受けます。
・既存の世界遺産の管理:委員会は既存の世界遺産に関する様々な管理計画やプロジェクトについて審査し、必要に応じて提案や指導を行います。これは遺産の保全や持続可能な管理に関するものです。
・危機に瀕した遺産の支援:危機に瀕した世界遺産に対する支援や緊急の保全措置の提案を行います。危機遺産の復旧や保全に関する国際的な協力を推進します。
・世界遺産基金の管理:委員会は、世界遺産基金を管理し、特に危機に瀕した遺産への資金援助を調整します。基金は遺産の保全や復元に利用されます。
・教育と啓発の促進:世界遺産への理解を深め、公共の意識を高めるために、教育や啓発活動を奨励します。これには、持続可能な開発や文化的多様性に焦点を当てたプログラムが含まれます。
・国際的な協力の促進:世界遺産に関する国際的な協力を促進し、異なる国々や地域間での連携を強化します。これにより、共通の目標を達成し、世界遺産の保存を確保します。
世界遺産委員会事務局(世界遺産センター)
・遺産情報の管理:事務局は、世界中の世界遺産に関する情報を集め、管理し、遺産リストやデータベースの維持を行います。これにより、最新の情報が委員会や国々に提供されます。
・新たな世界遺産の提案の審査:世界遺産の新規提案に関する文書や情報を審査し、審査結果を報告・提出する役割を担います。新規提案の審査プロセスで、事務局が重要な役割を果たします。
・既存の世界遺産の保全と管理:事務局は既存の世界遺産に関する国々からの報告を受け取り、審査し、保全や管理に関する提案や助言を行います。これには、管理計画の審査や進捗報告が含まれます。
・危機に瀕した遺産の支援:危機に瀕した世界遺産に対する支援や緊急の保全措置の実施に関する提案や調整を行います。事務局は危機遺産に対する国際的な協力を促進します。
・世界遺産基金の管理:事務局は世界遺産基金を管理し、プロジェクトや提案への資金援助を協調調整します。基金は世界遺産の保全や復元に使用されます。
・委員会との連絡調整:事務局はユネスコ世界遺産委員会と連絡を取り、会議や委員会の方針に基づいて業務を遂行します。事務局はまた、委員会に対する報告や提案を準備します。
・国際的な協力の推進:事務局は国際的な協力を奨励し、異なる国々や地域との連携を促進します。世界遺産の保存と管理に関する共同のプロジェクトを支援します。
事務局は、ユネスコの本部に設置されており、世界中の世界遺産に関する情報を中央で統括し、委員会と国々にサポートを提供しています。
世界遺産基金
世界遺産基金は、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)によって設立された資金であり、世界遺産の保全と管理に関するプロジェクトを支援するために使用されます。この基金は、危機に瀕した世界遺産の救援や持続可能な管理のために資金を提供することを目的としています。締約国は2年に1度、拠出金を支払わなければならない。
- 緊急援助:大規模な災害や事故、紛争等で被害を受けた遺産の復興費用
- 準備援助:事前調査への準備援助
- 保全・管理援助:専門家や技術者の派遣、遺産の保護・安全に従事する管理者や専門家の育成、遺産の価値や理念の教育、広報
世界遺産委員会の開催国一覧
2025年7月現在で直近の会議である、第47回世界遺産委員会の概要については、以下の通り。
過去の会議の情報
回 | 開催期間 | 開催都市と詳細 | 議長国 | 副議長国 | 書記国 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 1977/6/27-7/1 | パリ(フランス) | イラン | エジプト | カナダ |
2 | 1978/9/5-9/8 | ワシントンD.C. | アメリカ | イラン エジプト ナイジェリア フランス エクアドル | ポーランド |
3 | 1979/10/22-10/26 | ルクソール (エジプト) | |||
4 | 1980/9/1-9/5 | パリ(フランス) | |||
5 | 1981/10/26-10/30 | シドニー (オーストラリア) | |||
6 | 1982/12/13-12/17 | パリ(フランス) | |||
7 | 1983/12/5-12/9 | フィレンツェ (イタリア) | |||
8 | 1984/10/29-11/2 | ブエノスアイレス (アルゼンチン) | |||
9 | 1985/12/2-12/6 | パリ(フランス) | |||
10 | 1986/11/24-11/28 | パリ(フランス) | |||
11 | 1987/12/7-12/11 | パリ(フランス) | |||
12 | 1988/12/5-12/9 | ブラジリア (ブラジル) | |||
13 | 1989/12/11-12/15 | パリ(フランス) | |||
14 | 1990/12/7-12/12 | バンフ(カナダ) | |||
15 | 1991/12/9-12/13 | カルタゴ (チュニジア) | |||
16 | 1992/12/7-12/14 | サンタフェ (アメリカ) | |||
17 | 1993/12/6-12/11 | カルタヘナ (コロンビア) | |||
18 | 1994/12/12-12/17 | プーケット (タイ) | |||
19 | 1995/12/4-12/9 | ベルリン (ドイツ) | |||
20 | 1996/12/2-12/7 | メリダ (メキシコ) | |||
21 | 1997/12/1-12/6 | ナポリ (イタリア) | |||
22 | 1998/11/30-12/5 | 京都 (日本) | 日本 | ||
23 | 1999/11/29-12/4 | マラケシュ (モロッコ) | |||
24 | 2000/11/27-12/2 | ケアンズ (オーストラリア) | |||
25 | 2001/12/11-12/16 | ヘルシンキ (フィンランド) | |||
26 | 2002/6/24-6/29 | ブタペスト (ハンガリー) | |||
27 | 2003/6/30-7/5 | 蘇州(中国) →パリ SARS流行 | |||
28 | 2004/6/28-7/7 | 蘇州(中国) | |||
29 | 2005/7/10-7/17 | ダーバン (南アフリカ) | |||
30 | 2006/7/8-7/16 | ヴィリニュス (リトアニア) | |||
31 | 2007/6/23-7/2 | クライストチャーチ(ニュージーランド) | ニュージーランド | 日本 | カナダ |
32 | 2008/7/2-7/10 | ケベックシティ (カナダ) | カナダ | 韓国 チュニジア ケニア イスラエル ペルー | バルバドス |
33 | 2009/6/22-6/30 | セビリア (スペイン) | スペイン | オーストラリア チュニジア ケニア アメリカ バルバドス | ブラジル |
34 | 2010/7/25-8/3 | ブラジリア (ブラジル) | ブラジル | タイ エジプト 南アフリカ スウェーデン | バーレーン |
35 | 2011/6/19-6/29 | バーレーン→ パリ 騒乱による | バーレーン | カンボジア 南アフリカ スイス エストニア バルバドス | マリ |
36 | 2012/6/25-7/5 | サンクトペテルブルク(ロシア) | ロシア | マレーシア 南アフリカ アラブ首長国連邦 フランス メキシコ | メキシコ |
37 | 2013/6/17-6/27 | プノンペン (カンボジア) | カンボジア | タイ アルジェリア セネガル スイス コロンビア | セルビア |
38 | 2014/6/15-6/25 | ドーハ (カタール) | カタール | 日本 | コロンビア |
39 | 2015/6/28-7/8 | ボン(ドイツ) | ドイツ | インド カタール セネガル クロアチア ジャマイカ | レバノン |
40 | 2016/7/10-7/17 | イスタンブール(トルコ) | トルコ | フィリピン レバノン タンザニア ポーランド ペルー | 韓国 |
41 | 2017/7/25-8/3 | クラクフ (ポーランド) | ポーランド | 韓国 | タンザニア |
42 | 2018/6/24-7/4 | マナーマ (バーレーン) | バーレーン | 中国 ジンバブエ アゼルバイジャン スペイン ブラジル | ハンガリー |
43 | 2019/6/30-7/10 | バクー(アゼルバイジャン) | アゼルバイジャン | インドネシア チュニジア ブルキナファソ ノルウェー ブラジル | オーストラリア |
44 | 2021/7/16-7/31 | 福州(中国) オンライン開催 2020年はコロナで延期 | 中国 | ハンガリー スペイン グアテマラ ウガンダ バーレーン | バーレーン |
45 | 2022/6/19-6/30 2023/9/10-9/25 | カザン(ロシア) ウクライナ侵攻により延期後、議長国辞退→リャド(サウジアラビア) | サウジアラビア | ロシア イタリア アルゼンチン タイ 南アフリカ | インド |
46 | 2024/7/21-7/31 | ニューデリー(インド) | インド | ブルガリア | ベルギー |
47 | 2025/7/6-7/16 | パリ:ユネスコ本部(フランス) | ブルガリア | 韓国 カタール ザンビア ベルギー メキシコ | ルワンダ |
48 | 2026/7/19-7/26 | 釜山(韓国) | 韓国 | ||
49 | |||||
50 |
2023年世界遺産委員会の結果
会議の概要
・当初は2022年6月19日から30日にロシアで開催予定→2022年2月に勃発したロシアによるウクライナ 侵攻への批判から開催は無期限延期。
・ロシアが開催を辞退→副議長国のサウジアラビアを議長国(開催国)として、2023年9月10日から25日まで開催された。
・会議では2022年と2023年に審議予定だった遺産をまとめて審議。
・文化遺産33件、自然遺産9件が新規に世界遺産に登録された。(複合遺産の登録はなし)
・危機遺産は、カスビのブガンダ歴代国王の墓(ウガンダ)が危機遺産から除外、リヴィウ歴史地区、キーウの聖ソフィア大聖堂と関連する修道院群及びキーウ・ペチェールシク大修道院(いずれもウクライナ)が危機遺産に登録された。
・ルワンダが新規で世界遺産保有国として登録。(27か国が世界遺産登録なし)
結果の詳細
登録された文化遺産(33件)
・プーアルの景邁山古茶園の文化的景観 (中国)
・伽耶古墳群 (韓国)
・鹿石および青銅器時代の関連遺跡群 (モンゴル)
・コー・ケー遺跡(古代リンガプラや古都チョック・ガルギャーの考古遺跡) (カンボジア)
・ジョグジャカルタの天体軸と歴史的建造物群 (インドネシア)
・古代都市シーテープとドヴァーラヴァティー王国の関連遺跡 (タイ)
・ホイサラ王朝の宗教建造物群 (インド)
・サンティニケタン (インド)
・シルクロード:ザラフシャン・カラクム回廊 (タジキスタントルクメニスタンウズベキスタン)
・第一次世界大戦(西部戦線)の追悼と追憶の場 (ベルギー/フランス)
・ニームのメゾン・カレ (フランス)
・エアフルトの中世ユダヤ人関連遺産 (ドイツ)
・フラネケルのエイシンガ・プラネタリウム (オランダ)
・ザゴリの文化的景観 (ギリシャ)
・メノルカ島のタラヨ文化の先史時代遺跡 (スペイン)
・カザン連邦大学の天文台 (ロシア)
・キナルグ人の文化的景観と移牧の道 (アゼルバイジャン)
・ジャテツ地方とザーツホップの町の景観 (チェコ)
・クルディガ旧市街 (ラトビア)
・モダニズム都市カウナス:1919-1939年の楽天主義の建築 (リトアニア)
・ヴァイキング時代の円形要塞群 (デンマーク)
・トロンデック=クロンダイク (カナダ)
・ホープウェルの儀礼的土構造物群 (アメリカ)
・タカリク・アバフ国立遺跡公園 (グアテマラ)
・ESMA「記憶の場」博物館 – かつての拘禁、拷問、絶滅の秘密センター (アルゼンチン)
・ヨーデンサヴァネの考古遺跡 : ヨーデンサヴァネの入植地とカシポラクレークの共同墓地 (スリナム)
・古代エリコ/テル・エス=スルタン (パレスチナ)
・ペルシアのキャラバン・サライ (イラン)
・古代ゴルディオン遺跡 (トルコ)
・中世アナトリアの木造多柱式モスク群 (トルコ)
・ジェルバ : 島嶼域の入植様式を伝える遺産 (チュニジア)
・ゲデオの文化的景観 (エチオピア)
・ジェノサイド記憶の場:ニャマタ、ムランビ、ビセセロ、ギソッチ (ルワンダ)
登録された自然遺産(9件)
・トゥランの寒冬の砂漠群 (トルクメニスタン/カザフスタン/ウズベキスタン)
・ティグロヴァヤ・バルカ自然保護区のトゥガイ森林群 (タジキスタン)
・プレー山およびマルティニーク北部の火山と森林群 (フランス)
・アペニン山脈北部の蒸発岩カルストと洞窟群 (イタリア)
・アンティコスティ (カナダ)
・ウルク・バニ・マアリッド自然保護区 (サウジアラビア)
・バレ山地国立公園 (エチオピア)
・オザラ・コクア森林山塊 (コンゴ共和国)
・ニュングェ国立公園 (ルワンダ)
2024年世界遺産委員会の結果
緊急案件を含む24件(文化遺産19、自然遺産4、複合遺産1)が新規登録され、世界遺産の総数は1223件となりました。
日本からは「佐渡島の金山(さど)/金を中心とする佐渡鉱山の遺産群」が登録されました。
結果の詳細
登録された文化遺産(19件)
ハグマターナとハマダーン歴史地区(イラン)
モイダム(英語版)群 – アーホーム朝の墳丘システム(インド)
プー・プラバート歴史公園(タイ)
北京中軸線(中国語版):中華の理想的秩序を示す建造物群(中国)
佐渡島
の金山(日本)
ニア国立公園の洞窟群の考古遺産(マレーシア)
アル=ファウ(英語版)考古地域の文化的景観(サウジアラビア)
ウンム・アル=ジマール(ヨルダン)
ゲディ(英語版)の歴史地区と考古遺跡(ケニア)
ティエベレ(英語版)の王宮(ブルキナファソ)
人権、解放および和解:ネルソン・マンデラ関連遺産群(南アフリカ共和国)
現生人類の出現:南アフリカの更新世居住遺跡群(南アフリカ共和国)
「街道の女王」アッピア街道(イタリア)
シュヴェリーンの邸宅群(ドイツ)
トゥルグ・ジウのブランクーシ記念作品群(ルーマニア)
ローマ帝国の国境線 – ダキア(ルーマニア)
ケノゼロ湖(英語版)の証拠(ロシア)
メルカ・クントゥレ(英語版)とバルヒトの考古学的・古生物学的遺跡群(エチオピア)
聖ヒラリオン修道院(英語版) / テル・ウンム・アメル(英語版)(パレスチナ)※緊急登録
登録された自然遺産(4件)
バダインジャラン砂漠 – 聳える砂丘群と湖沼群(中国)
フロー・カントリー(英語版)(イギリス)
ラヴノ(英語版)のヴィエトレニツァ洞窟(英語版)(ボスニア・ヘルツェゴビナ)
レンソイス・マラニャンセス国立公園(ブラジル)
登録された複合遺産(1件)
テ・ヘヌア・エナタ – マルキーズ諸島(フランス領ポリネシア)
2025年の世界遺産委員会の開催
新規に世界遺産保有国となったのは、ギニアビサウ、シエラレオネの2か国である。この時点で、世界遺産条約を締約している196か国のうち、世界遺産を保有していない国は26か国となった。また、北朝鮮で初の複合遺産(金剛山 – 海から望む金剛石の山)が登録されました。
その結果、26件(文化遺産21、自然遺産4、複合遺産1)が新規登録され、世界遺産の総数は1,248件となりました。
結果の詳細
登録された文化遺産(21件)
ムルジュガの文化的景観(オーストラリア)
ホッラマーバード渓谷の先史時代洞窟群とファラコルアフラークの遺跡群(イラン)
インドのマラーター軍事景観群(インド)
カンボジアの記憶の場所群 : 弾圧の中心地群から平和と反省の各所まで(カンボジア)
盤亀川流域の岩絵群(韓国)
フッタルの旧跡群(タジキスタン)
西夏王陵(中国)
イェントゥー=ヴィンギエム=コンソン・キエップバックの遺跡・景観群(ベトナム)
セランゴールのマレーシア森林研究所森林公園(マレーシア)
ファヤの先史景観(UAE)
マンダラ山地ディ=ジド=ビーの文化的景観(カメルーン)
ムランジェ山の文化的景観(マラウイ)
サルデーニャの先史芸術と建築 – ドムス・デ・ジャナス(イタリア)
ミノアの宮殿地区群(ギリシャ)
バイエルン王ルートヴィヒ2世の宮城群: ノイシュヴァンシュタイン、リンダーホーフ、シャッヒェン、ヘレンキームゼー – 夢想から現実へ(ドイツ)
サルディスとビン・テペのリュディア墳丘群(トルコ)
カルナックとモルビアン海岸の列石群(フランス)
グディニャの初期モダニズム中心市街(ポーランド)
アルヴァロ・シザの建築 : 現代コンテクスチュアリズム遺産(ポルトガル)
シュルガン=タシュ洞窟の岩絵群(ロシア)
ポート・ロイヤルの17世紀の考古景観(ジャマイカ)
パナマの植民地時代の地峡横断道路(パナマ)
ウイチョル族のウイリクタへの聖地群経由路(タテワリ・ワフイェ)(メキシコ)
登録された自然遺産(4件)
ビジャゴ諸島とオマティ・ミニョの沿岸・海洋生態系群(ギニアビサウ)
ゴラとティワイの保護区群(シエラレオネ)
ムンス・クリント(デンマーク)
カヴェルナス・ド・ペルアス国立公園(ブラジル)
以下は、範囲変更
・ヒンナムノー国立公園(ラオス)
(ベトナムの世界遺産「フォンニャ=ケバン国立公園」の重大な変更)
・マプト国立公園(モザンビーク)
(南アフリカ共和国の世界遺産「イシマンガリソ湿地公園」の重大な変更)
登録された複合遺産(1件)
まとめ
世界遺産条約は、単なる紙の上の文書ではありません。それは、世界中の人々が協力し、未来のためにかけがえのない文化遺産と自然遺産を守り続けるという、人類の共通の意思と努力の象徴です。ユネスコ、世界遺産委員会、そしてその多様な協力機関が一体となって働くことで、この壮大な約束は今日も世界中で実践され続けているのです。
・世界遺産条約に基づいて、世界遺産委員会が設立され、世界遺産の登録や管理に関する決定を行う。
・世界遺産条約締約国会議は、ユネスコ加盟国(195か国)のうち、ナウルを除く194か国とバチカン市国が締約している。
・世界遺産委員会は世界遺産条約締約国総会で選出された21か国の委員国で構成される。
・世界遺産委員会は、世界遺産リストへ登録推薦された遺産に対し、「登録」「情報照会」「登録延期」「不登録」の4段階で決議を行う。
・2023年世界遺産委員会で、ルワンダが新規で世界遺産保有国として登録。
・2025年世界遺産委員会で、新規に世界遺産保有国となったのは、ギニアビサウ、シエラレオネの2か国である。
・世界遺産委員会事務局は、世界遺産委員会の業務を支援し、世界遺産に関する活動を調整・促進する中心的な組織です。
・世界遺産基金は、世界遺産の保全と管理に関するプロジェクトを支援するために使用されます。
世界遺産に興味を持たれた方は、世界遺産検定に挑戦してみてはいかがでしょうか。
世界遺産検定公式HP






世界遺産に関するよくある質問
世界遺産について、皆さんが疑問に思うことの多い質問とその回答をまとめました。
世界遺産って具体的に何を指すの?
世界遺産とは、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が認定した、人類全体にとってかけがえのない価値を持つ文化財や自然地域のことです。地球上の多様な文化や自然の多様性を代表するもので、将来の世代に引き継いでいくべき宝物とされています。大きく分けて、人類の歴史や文化を示す「文化遺産」、地球の自然や生態系を示す「自然遺産」、そして両方の価値を兼ね備える「複合遺産」の3種類があります。
世界遺産に登録されると、何か特別なメリットがあるの?
世界遺産に登録されると、主に以下のようなメリットがあります。
- 国際的な認知度向上: 世界中からの注目を集め、観光客が増加することで、地域経済の活性化につながります。
- 保護・管理体制の強化: 国際的な基準に基づいた保護計画が策定され、必要に応じてユネスコの世界遺産基金からの支援も受けられます。これにより、より専門的かつ持続可能な形で遺産が守られます。
- 地域住民の意識向上: 遺産が世界的に認められることで、地域の人々の遺産への誇りや、保全活動への意識が高まります。
日本にはいくつ世界遺産があるの?
2024年7月現在、日本には26件の世界遺産が登録されています。内訳は、21件の文化遺産と5件の自然遺産です。
世界遺産って一度登録されたら、ずっと安泰なの?
いいえ、そうではありません。世界遺産は登録後も、その「顕著な普遍的価値」を維持しているか、ユネスコによって継続的にモニタリングされます。自然災害、開発、紛争、オーバーツーリズム(観光客の過剰な集中)などによって遺産が脅威にさらされた場合、その遺産は「危機遺産リスト」に登録されることがあります。これは、国際的な支援を促し、遺産の保護を強化するための措置です。極めて稀ですが、価値が完全に失われたと判断された場合は、世界遺産リストから削除される可能性もあります。
世界遺産と、日本の国宝や国立公園ってどう違うの?
- 世界遺産: ユネスコが国際的な基準に基づいて認定する「人類全体にとっての価値」を持つ遺産です。国際的な保護と協力の枠組みで守られます。
- 国宝: 日本国内の文化財保護法に基づき、特に価値が高いと国が指定する建造物や美術工芸品です。国内法による保護が主です。
- 国立公園: 自然公園法に基づき、優れた自然景観を持つ地域を国が指定・保護するものです。自然環境の保全と利用の調和を目指します。
これらは保護のレベルや管轄が異なりますが、例えば、日本の自然遺産である「屋久島」や「知床」は国立公園の一部であり、また文化遺産の中には国宝を含むものも多く、複数の保護制度が重なり合って適用されているケースも少なくありません。
世界遺産を訪問する際に、気を付けるべきことは?
世界遺産は貴重な人類共通の財産です。訪問する際には、以下の点に配慮しましょう。
- ルールやマナーを守る: 各遺産にはそれぞれの保護のためのルールがあります。立ち入り禁止区域に入らない、指定されたルートを歩く、ゴミは持ち帰るなど、現地の指示に従いましょう。
- 遺産に触れない・傷つけない: 建造物や自然物には直接触れたり、落書きをしたり、何かを持ち去ったりしないようにしましょう。
- 写真撮影に配慮する: フラッシュの使用が禁止されている場所や、特定の場所での撮影が制限されている場合があります。他の訪問者や地元住民への配慮も忘れずに。
- 地域文化を尊重する: 遺産が所在する地域の文化や伝統、人々の生活を尊重し、敬意を持って行動しましょう。
- 持続可能な観光を心がける: 大量の観光客が集中することで遺産や地域社会に負荷がかかることがあります。混雑時を避ける、公共交通機関を利用する、地元経済に貢献するなどの配慮も大切です。
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