世界遺産検定1級を目指す学習者に向けて、複数の世界遺産にまたがる「石窟寺院」を整理した大辞典エントリーです。個々の遺産の解説ではなく、石窟寺院に関わる世界遺産を横断して一覧できる索引として使えます。
基礎データ
| 見出し語 | 石窟寺院(石窟) |
|---|---|
| 定義 | 崖や岩山を掘って(または石を組んで)造った宗教施設。仏教の例が多いが、ヒンドゥー教などの例もある。内部に仏像や壁画を備える(一般的な説明)。 |
| 世界遺産での現れ方 | 壁画と彩色塑像の宝庫(莫高窟)/石に彫り出した仏像群(雲崗・龍門)/三教が並ぶ石刻(大足)/山腹の石窟と寺院(石窟庵・仏国寺) |
| 関連する世界遺産 | 辞典内は6件(中国5件・韓国1件)。このほか、インド・スリランカ・アフガニスタンの代表例を下に挙げます(大辞典には未収録)。 |
混同しやすい点:莫高窟・雲崗・龍門・大足・石窟庵
莫高窟・雲崗石窟・龍門石窟は、中国を代表する石窟としてよく並べて挙げられます(「三大石窟」と呼ぶこともありますが、これは通称です)。UNESCOの記述で見分けると、莫高窟は壁画と彩色された塑像が中心、雲崗石窟と龍門石窟は岩壁を彫った石の仏像が中心です。大足石刻は、仏教・道教・儒教の像が並ぶ点が特徴で、三教の調和した融合を示すと評価されています。石窟庵は中国ではなく韓国(新羅)の遺産で、仏国寺とあわせて1件として登録されています。また、石窟庵は岩山を掘ったものではなく、花崗岩を組み上げて造った人工の石窟です。
関連する世界遺産の一覧
中国
- シルクロード:長安-天山回廊の交易路網(2014年):中国・カザフスタン・キルギスにまたがる遺産。中国側の構成資産に、麦積山・炳霊寺・彬県大仏寺などの石窟寺院が含まれます。麦積山を加えて「四大石窟」と呼ぶこともあります(通称)。基準(ii)(iii)(v)(vi)。
- 敦煌の莫高窟(1987年):シルクロードの要衝にある仏教美術の宝庫。366年に造営が始まり、現存する492の窟に約45,000平方メートルの壁画と2,000体を超える彩色塑像が残ります(基準(i)〜(vi))。
- 雲崗石窟(2001年):山西省大同の石窟群。北魏の時代、252の窟と龕、約51,000体の像が5世紀中ごろから6世紀初めにかけて造られました。中国仏教美術の最初の頂点を代表する傑作とされる「曇曜五窟」で知られます(基準(i)〜(iv))。
- 龍門石窟(2000年):洛陽の南、伊河の両岸に広がる石窟群。北魏後期から唐にかけての作品で、2,300を超える窟と龕、約11万体の仏像を数え、中国の石彫の頂点と評価されています(基準(i)(ii)(iii))。
- 大足石刻(1999年):重慶市の石刻群。9世紀から13世紀にかけての石刻で、仏教・道教・儒教の調和した融合を示します(基準(i)(ii)(iii))。
韓国
- 石窟庵と仏国寺(1995年):新羅時代の8世紀、吐含山の山腹に造営。石窟庵は花崗岩を組んで造った人工の石窟で、釈迦如来像は降魔触地印を結び、極東の仏教美術の傑作とされます。仏国寺は774年に完成しました(基準(i)(iv))。
インド・スリランカ・アフガニスタン(大辞典には未収録)
- アジャンターの石窟群(インド、1983年、基準(i)(ii)(iii)(vi)):紀元前2〜1世紀に始まる仏教の石窟で、グプタ朝期(5〜6世紀)に多くの窟が加えられました。壁画と彫刻は仏教美術の傑作とされます。
- エローラの石窟寺院群(インド、1983年、基準(i)(iii)(vi)):玄武岩の崖に並んで掘られた34の僧院と寺院で、600〜1000年ごろの記念建造物が連続します。
- エレファンタ石窟群(インド、1987年、基準(i)(iii)):シヴァ神の信仰にかかわる岩の彫刻群で、仏教ではなくヒンドゥー教の例です。
- ランギリ・ダンブッラの黄金寺院(スリランカ、1991年、基準(i)(vi)):22世紀にわたる巡礼地の石窟寺院で、仏教の壁画と157体の像があります。
- バーミヤン渓谷の文化的景観と古代遺跡群(アフガニスタン、2003年、基準(i)〜(iv)(vi)):1〜13世紀のガンダーラ仏教美術を伝える、多数の僧院と聖域を含む景観です。
よくある質問

莫高窟・雲崗石窟・龍門石窟は、どう見分けますか?
UNESCOの記述では、莫高窟(敦煌)は壁画と彩色された塑像が中心で、雲崗石窟(大同)と龍門石窟(洛陽)は岩壁を彫った石の仏像が中心です。雲崗は北魏、龍門は北魏後期から唐の作品で、場所と時代があわせて手がかりになります。
石窟庵も、岩山を掘って造った石窟ですか?
いいえ。石窟庵は花崗岩を組み上げて造った人工の石窟で、前室・廊下・円形の主室からなります。新羅時代の8世紀に、吐含山の山腹に仏国寺とともに造られました。中国やインドの、岩壁を掘った石窟とは造り方が違います。


